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「アフタースクール」
内田けんじ監督 渾身のトリック炸裂
2008/5/16    産経新聞東京朝刊 by 戸津井康之
「見る人を最後まで飽きさせない」。内田けんじ監督が映画作りで最も重視することだ。巧みなプロット(物語の筋)で注目を集めた劇場デビュー作「運命じゃない人」から3年。さらなる斬新な“仕掛け”を張りめぐらせた新作「アフタースクール」が、24日から東京・渋谷のシネクイントなどで公開される。ひねりを加えたプロットは前作に増して磨きがかかり、見る者の意表を突くが、本人は「驚かせようという意図はないんです」と飄々(ひょうひょう)と語る。

内田けんじ監督 中学校教師、神野(大泉洋)の元へ、中学の同級生と名乗る探偵、北沢(佐々木蔵之介)が訪ねてくる。北沢は同じく同級生で大企業に勤める神野の親友、木村(堺雅人)の行方を追っていた…。

「物語の構想が浮かんだのは、幼なじみの友人とファストフード店の2階で待ち合わせをしたとき。1階にハンバーガーを買いに行ったまま、友人が30分近く戻ってこなかったんです。理由はただ込んでいただけなのですが、この時、空想したんです。もし、このまま友人が蒸発したらと」

ニヤリと笑みを浮かべて続ける。「僕はその友人のことを何でも知っていると思い込んでいるだけで、実は何も知らないのかもしれない。まったく知らない事実が隠されていてもおかしくないでしょう?」

発想もユニークだが、ストーリーテラーとしてのキレとさえが随所に見られ、スリリングな展開は最後まで息つく暇を与えない。

映画監督を目指す若手の登竜門、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)でチャンスをつかみ、PFFスカラシップの支援で劇場デビュー作「運命じゃない人」を製作。「アフタースクール」はいわば“対外試合”のデビュー戦とも言える。

「製作費、撮影期間、スタッフの数など、撮影環境は間違いなく良くなっているのですが、撮るしんどさはこれまでとまったく変わりませんよ。僕が成長していないのかなあ」と苦笑する一方で、「映画作り、現場の楽しさを改めて身をもって実感できました」と満足げに語る表情には自信がにじみ出る。

人間の想像力の限界を試し、挑むかのような内田渾身(こんしん)のトリックが全編で炸裂(さくれつ)する。オープニングショットからラストまで、一瞬たりとも緊張を解くことは許されない。

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