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「長い長い殺人」刺激的なキャスト競演
主演、長塚京三に聞く
2008/5/30    産経新聞東京朝刊 by 戸津井康之
語り部は登場人物の財布たち。「私の主人は…」と財布が真相を解き明かしていく異色の映画「長い長い殺人」(麻生学監督)は、宮部みゆきの同名小説が原作の群像劇だ。昨年末、WOWOWのテレビドラマとして放送されたが、麻生監督が劇場公開を前提に撮影した映像は重厚で緊迫感に満ち、大スクリーンにふさわしい本格推理ドラマに仕上がっている。財布とともに事件の真相に迫る主人公の刑事を演じた長塚京三に聞いた。

長塚京三 東京郊外でひき逃げ事件が発生。被害者の男には高額の保険金がかけられていた。受取人である妻、法子(伊藤裕子)に容疑がかかるが、アリバイがある。刑事の響武史(長塚)は捜査を始める。

刑事、探偵、目撃者、そして容疑者…。さまざまな人物の財布たちが“主人”の性格や暮らしぶりなどを淡々と語っていくドラマは、オムニバスのように広がっていく。

「キャストがとにかく異色。かつてない刺激的な現場でした」と長塚は満足げに振り返る。

理由はこうだ。「主演を張れる俳優たちがわずかな出番の端役に徹しているのですから。オールスターキャストと呼べるのに、それぞれ自分の役割を地味に淡々と演じ切っています。だから非常に密度の濃い内容の深いドラマができた自信があります」

登場人物の数は40人を超える。「キャストの数が多く、共演の時間はそれぞれ一瞬しかないですから、互いに打ち合わせをする時間も十分ないままに撮影が始まる。それだけに、全員が限られた時間の中で最大のパフォーマンスを見せることができた」

映像が発する「張りつめた空気感」の理由はほかにもある。

「登場人物の誰もが危うさを持っている。私が演じた主人公の響さえ、強い正義感と義務感を持つ男なのに、生活苦の中で決して不正とは無縁といえなくなるのですから…」と苦笑しつつ、語気を強めて続けた。

「人間誰しもが持つ危なっかしさ、弱さを、格好つけずに真摯(しんし)に演じている俳優たちの演技に注目してほしい」

31日から東京・シネマート六本木などで公開。

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