俳優の平岳大(ひらたけひろ)が、市川猿之助総合演出による舞台「ジンギスカン〜わが剣、熱砂を染めよ〜」に主演する。モンゴルの英雄ジンギスカンの生きようを描くロマン大作。「パワフルでエネルギッシュなジンギスカン像をお見せしたい」と意欲を燃やしている。
昭和61年に松平健主演で初演され、今回はキャストを若手中心に一新しての上演。ジンギスカンのモンゴル制圧の過程をはじめ恋愛にもスポットをあてた展開だ。
脚本を読んだのは、父で俳優の平幹二朗との共演で「オセロー」の悪漢イアーゴを演じていたとき。
「悲劇の加害者だったので、別の立場で役を作りたいと思っていたところ。ジンギスカン役と聞いてがぜん、やる気がでましたね」と笑わせつつ、「主役としての演技というものはなく、観客の皆さんの想像心をくすぐり、感情移入できるような、熱くスケール感のある芝居にしたい」。
視覚的な説得力を出すため、ジムに通って体を鍛えた。精神面での役づくりは「モンゴルの族長の息子として生まれ、周りの期待を背負った責任ある立場としてどのように成長していくかをどう見せるかが課題」という。また、「男としてどう父親を超えるかは、ぼくにとっての課題でもある」とも。
母親は女優の佐久間良子。両親は11歳のとき、離婚している。小さいころ、漠然と親の仕事に興味を抱いていたものの、母親は猛反対で、仕事場への出入りも禁止されていた。「誰がやるか!」と、ある種の反発心から15歳で渡米。コロンビア大学大学院を修了後、日本の企業に勤務したが、俳優へのあこがれを捨てきれず、意を決して転身。平成14年、「鹿鳴館」でいきなり、親子3人の共演により舞台デビューを果たした。
「家庭では父親を知らずに育ちましたが、芝居で父親を知ることができた。厳しい世界。いまになって、母が反対していた理由が分かりましたし、普通のサラリーマンでいた方がよかったのでは、といわれることもありますが、そう言われると逆に燃えます(笑)。人より後れをとった分は今後、とり返していきたい」
舞台やドラマで活躍してきた中で、現在は出演映画「茶々−天涯の貴妃」が公開中。NHK大河ドラマ「篤姫」では徳川慶喜役で出演するなど、さらなる飛躍の1年になりそうだ。
「今までの経験をひとつの形にできる年…なのかな。どんな役もできる、というより、こういう役なら平岳大だと言われるようになれば」
28日まで、東京・銀座のル テアトル銀座。(電)03・5427・1887。