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曲がり角 甘い勧誘
自費出版、トラブル急増
2008/1/28 産経新聞  東京朝刊 by 住井亨介
再生の見通しがなくなり、破産手続きに入ることが明らかになった自費出版大手の新風舎(東京)。同社は「自分の本を出してみたい」という夢の実現を触れ込みに事業を拡大した。長引く出版不況といわれる中にありながらブームとなっていた自費出版は、一方で甘い言葉で出版社から勧誘された人たちによる損害賠償訴訟など契約をめぐるトラブルも発生。関係者からは「ブームは曲がり角」との声も上がっている。


独自方式
昭和55年創業の新風舎は、著者と出版社が費用を負担する「共同出版」方式を採り、同社が書籍を流通ルートに載せるシステムを構築、自費出版ブームに乗った。出版ニュース社の「出版年鑑2007」によると、新風舎の平成18年の新刊書籍点数は、老舗の講談社を抜いて1位。

だが、昨年7、11月には、著者6人が契約内容が履行されないなどとして、同社に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こすなど、トラブルも表面化している。

ある出版関係者は「自費出版本を書店に並べるという新しいビジネスモデルで潜在的需要を発掘したが、著者の夢をあおる過剰な営業トークもあったようだ」と話す。

自費出版業界では、契約書を作成しなかったり、費用など重要事項について説明しないなど不透明な契約をする業者も多いとされ「業界全体の問題」との指摘もある。

自費出版業者約120社が加盟するNPO法人「日本自費出版ネットワーク」(東京)の筑井信明理事は「業者は(消費者に)見える形で情報を出すべきだ」と話す。

相談増
国民生活センターのまとめでは、全国の消費生活センターに寄せられた自費出版をめぐる相談は、平成14年度の51件から18年度には194件と、約4倍に急増。今年度(1月10日現在)も216件と昨年度同期の2倍近くになっている。

新聞やインターネットの広告を見て自ら申し込んだ相談者もいるが、出版社などが主催するコンテストなどに応募。その後、「落選したが、良い作品なので自費出版しないか」と甘い言葉で勧誘されるケースも多いという。

当初の説明にない費用を請求されたり、期日までに本が仕上がらないことへの相談が目立ち、中には宣伝費として約700万円を支払ったケースもあった。

団塊世代
自費出版ブームが目立ち始めたのはここ10年ほど。「携帯小説」に代表されるように、ネットの普及で誰もが文章を発信できる時代と重なったことや、団塊世代の大量退職で金銭的余裕を持つ層が増えたことが要因とされる。

国民生活センターの調査でも、相談の約半数は50代以上の中高年からで、70代以上が最も多く20%を占めている。

退職後の生活環境づくりについて情報提供しているNPO「リタイアメント情報センター」で、自費出版トラブル相談室を開設する尾崎浩一副理事長は「60代以上の方は、人生の節目に自分の余録や研究を出版したい、何かを残したいという欲求がある」と話す。尾崎副理事長は「費用が高い安いというだけでなく、出版の目的を考えるべきだ。本当に書店に流通させる必要があるのか、知人に配るだけならその必要はない」と注意を呼びかけている。

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