「低騒音」を売りにした生活家電製品の発売が相次いでいる。共働き世帯が増え、生活スタイルが多様化。帰宅後の夜間に家事をする“夜カジ族”の増加が背景にある。家電メーカーは「1デシベル」単位の静音対策にしのぎを削っている。
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低騒音が魅力の東芝のクワイエ。「マナーモード」を選択すれば運転音を43デシベルまで抑えられる |
掃除も夜間に
東芝コンシューママーケティングが1日に発売したサイクロン式掃除機「Quie(クワイエ)VC−1000X」。「静かな」を意味する「quiet」から名を取っただけに、業界一という低騒音が売りだ。
最大450ワットの吸引力を誇るが、運転音は「静かなオフィス並み」という49デシベル。モーターをカバーで覆うことで運転音を抑え、振動を吸収するサスペンションを付けて振動も抑えた。さらに本体の車輪にゴムを付けて回転時の音を減らすなど、細かな部分でも騒音を減らすよう工夫されている。
同社が昨年、消費者800人を対象に掃除機を選ぶポイントを聞いたところ、「運転音が静か」という回答が、「強い吸引力の持続」「排気の清潔さ」などに続いて多かった。東芝コンシューママーケティング家電事業部の小林博明さんは「土日に遠出するために、金曜夜に掃除機をかける家庭も少なくない。集合住宅や共働き世帯の増加を受けて『低騒音』のニーズは高まっている」と、ライフスタイルの変化を指摘する。
シャープが昨年11月に発売した「パワーサイクロン EC−VX2」も、モーターを樹脂カバーで覆ったり排気経路を長く設けたりして、運転時の騒音を51デシベルに低減。同社製掃除機の売り上げを前年同期比2倍近くに押し上げる原動力になった。
洗濯は4割も
掃除機以上に低騒音への要望が強いのが洗濯機。花王の調査によると「午後6時以降に洗濯することがある」という人は、フルタイムで働く女性で約4割、専業主婦でも18%に上った。
三洋電機が1月に発売したドラム式洗濯乾燥機「AQUA(アクア)」は、回転数を減らした「ナイトコース」を搭載しており、脱水時の騒音を約35デシベルにまで抑えられるという。シャープの「ES−HG92G」は、ドラムと外装のキャビネットを分離させた「免振ドラム構造」が特徴。振動を吸収するダンパーでドラム部分を浮かせる構造のため、「振動が外部に伝わりにくく、大幅に騒音を減らせる」(広報室)という。
冷蔵庫でも静音対策が着々と進む。三菱電機の「MR−G52N」は、自動製氷機から氷が落ちる部分に特殊な防音マットを敷くなどして、運転音を10年前の同社製品の4分の1程度にあたる14デシベルまで下げたという。
国土交通省のマンション総合調査(平成15年度)では「生活音」に関する居住者間のトラブルは違法駐車・駐輪に次いで多かった。いさかいを避けるためにも、低騒音を求める声は今後も強まりそうだ。
騒音の目安
騒音レベル 音の種類
120デシベル 飛行機のエンジンの近く
110デシベル リベット打ち
100デシベル 電車が通るときのガード下
90デシベル 騒々しい工場の中
80デシベル 電車内
70デシベル 騒々しい街頭
60デシベル 普通の会話
50デシベル 静かな事務所
40デシベル 図書館の中
30デシベル 静かな住宅地の夜
20デシベル 木の葉のふれあう音
※浜松市ホームページをもとに作成