すべてのガスコンロが4月から安全に生まれ変わる。うっかり火を消し忘れてしまったとき、安全装置が働いて自動的にガスが遮断されるなど安全機能が充実。いわば「頭のいい安全コンロ」で、ほとんどの家庭に普及する10年後には、コンロが原因となった火災が激減すると期待されている。
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バーナーの中央にある突起が鍋底の温度を感知するセンサー。温度が上がると自動的にガスがストップする=東京・西新宿の東京ガス新宿ショールーム |
この新しいコンロは「Siセンサーコンロ」と名づけられた。家庭用コンロのすべてのバーナー(火口)に安全センサーを搭載し、消し忘れなどの際に火を止める機能を備えている。
センサーコンロの安全装置は(1)天ぷらなどの油が煙を出し始める250度に達するとガスがストップする「調理油過熱防止装置」(2)吹きこぼれなどで火が消えた場合にガスを遮断する「立ち消え安全装置」(3)連続使用しているコンロで一定時間(2時間)でガスを遮断する「消し忘れ消火機能」。
4月以降に製造される家庭用ガスコンロには、都市ガス、LPガスなどのタイプを問わず、これらの安全機能が全国で標準装備され、安全センサー搭載のロゴマークが付く。お年寄りの1人暮らしの家庭など、消し忘れ機能などは強い味方になりそうだ。
10月に国が導入する予定の新安全基準では「調理油過熱防止装置」「立ち消え安全装置」の装備が義務付けられることになっており、ガス事業者やガス機器メーカーなどガス業界が主体となって、基準を先取り・拡大する形で安全機能の業界標準化を行った。経産省では「安全機能によりガスコンロによる火災は激減する」とみている。
消防庁によると、建物火災の出火原因でコンロ(電気を含む)を原因とする火災発生は全建物火災の約19%(平成18年)にもなる。そのうち調理中に目を離したことによる火災は7割を占める。圧倒的に不注意による失火が多い。
実は、17年8月以降に製造された2口または3口のガスコンロには、必ず1口のバーナーに「調理油過熱防止装置」が装備されている。ところが日本ガス協会によると、ガスコンロからの失火の多くは、こうした安全機能がついていないバーナーを使用していた。つまり、安全機能のついていないバーナーで天ぷらを揚げて、油が過熱し、「天ぷら火災」に至るようなケースだ。
同協会では「機能を知らずに使っているため、役に立たなかった。しかし4月からはすべてのバーナーに安全センサーがつくので安全。機能を知らない人でも大丈夫」と話す。
国内で使用されているガスコンロは約4500万台。同協会は、10年後にはガスコンロのほとんどがセンサーコンロにかわるとみており、「キッチンからの火災は大幅に減る」と大いに期待している。
機能が充実した分、コンロの値段が高くなることは避けられない。業界では1万から1万5000円ほど高くなると予想している。
また、機器に頼っているだけで安全が保たれるわけではない。周辺に燃えやすい物を置いたり、調理中に粉物をふりかけたりするのは危険だ。日本ガス協会は「ガスコンロは火を使うので、使用者が安全に使っていただくことが肝心です」と注意を喚起している。