小型で高性能なデジタルカメラが急速に普及する中、若い女性を中心にフィルムカメラに魅了される人が増えている。ネット上の交流をきっかけにDPE店が誕生し、現像やプリントのコツを教える講座も盛況だ。独特の色の深みや仕上がりを待つ時間…そんな魅力を見直す動きが出ている。
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客自らプリントできる「レンタルラボ」サービスも=東京都目黒区のモノグラム |
若い女性魅了
女性が9割群馬県内の大学を今春卒業する松澤垂穂さん(22)は、富士フイルム製のコンパクトカメラ「ナチュラ クラシカ」を愛用するフィルムファン。バイクで買い物に行く道中、気に入った風景をフィルムに収めるのが最近の楽しみだ。
大学入学まではデジタル一辺倒。ところが、ここ数年のトイカメラブームを機に、フィルムの魅力に取りつかれた。「何でもはっきり写るデジタルとは違って、写真にどこか温かみがある。仕上がりをじっくり待つのも楽しい」と話す。
松澤さんがよく足を運ぶのが、東京・学芸大学駅近くに1月にオープンした「monogram(モノグラム)」。カメラ好きの人が集うネット上の交流をきっかけに生まれたDPE店だ。1階には現像機のほかにフィルムや雑貨が並び、2階には作品を展示するギャラリーがある。
同店では、フィルムカメラでの夜景撮影のほか、現像やプリント補正のコツを教える講座も随時開催。受講者の大半が初心者の女性で、毎回早々に定員が埋まる盛況ぶりだ。同店の宮本琢也さんは「フィルムには独特の色の深みがあり、補正を使って遊べる範囲も広い。プリントの面白さをもっと伝えて、フィルムファンを増やしたい」と話す。
初心者講座
レンタル暗室一方、NPO法人「ザ・ダークルーム・インターナショナル」(横浜)は1時間850円でモノクロ専用の暗室を貸し出す。フィルム初心者に現像やプリントの手順を教える講座「手取り足取りコース」も設置。小山優子事務局長は「ここ数年は特に利用者が増え、会員は700人を超えた。近年のフィルム市場の縮小を感じさせない熱気」と話す。
カメラ映像機器工業会によると、昨年のフィルムカメラの総出荷実績は前年比約5割減の79万台。デジタルカメラの急伸に反比例する形で減り続けているのが実情だ。
半面、フィルム愛用者100人の作品を収録した写真集『カメラピープル2』(ピエ・ブックス)は昨年12月の発売から2カ月で増刷がかかった。フィルムの特徴を紹介する記事も好評だという。
モノグラムの佐藤嘉宏代表は「今はフィルムとデジタルの両方を楽しめる恵まれた時代」と話す。二者択一ではなくTPOで使い分けるスタイルが浸透すれば、フィルムの未来にも光が射すかもしれない。