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環境保全型農法を導入 品質高いワインに
ワイン業で成功 医師スー・ファー・ニュートンさんに聞く
2008/3/12 産経新聞  東京朝刊 by 頼永博朗
西洋を代表する酒、ワイン。中国出身のスー・ファー・ニュートンさんは欧米のワイン業界で成功している数少ないアジアンビューティーだ。1970年代に米国屈指のワインの生産地、カリフォルニア州ナパ郡にワイナリー「ニュートン・ヴィンヤード」を設立し、現在は環境保全型農法を導入するなど、そのワインの品質に高い評価を得ている。ワイン造りの傍ら、無報酬で小児医療に従事するなど医師としても精力的に活動。まさに異色のワインメーカーだ。

自身のワイナリーで醸造したワインを手にするスー・ファー・ニュートンさん=東京都中央区の三井ガーデンホテル銀座(大井田裕撮影)
自身のワイナリーで醸造したワインを手にするスー・ファー・ニュートンさん=東京都中央区の三井ガーデンホテル銀座(大井田裕撮影)

ワイナリーは77年、ナパ郡のスプリング・マウンテンの220ヘクタールの土地に設立した。数年前、フランスに本拠を置く大手高級ブランド企業体の傘下に入り、自身はワイナリーの代表を務めている。

87年からオーガニックを導入。ブドウは無農薬で栽培し、人工的にワインに香りを付けられる化学酵母に頼らず自然酵母を発酵に用い、より長い熟成期間が必要で経費も労力もかかる無濾過(ろか)を実践している。ワインは濾過せずに瓶詰めすると、澱(おり)や微生物が多く残る恐れがある半面、土壌の個性を表すワインの風味が生かされるとともに、抗酸化物質などが損なわれにくいのだという。

「ワインは人と同じようなもの。医師として抗生物質を人に(安易に)用いることには反対。同じように、安く簡単にワインが造れるからといって農薬や化学酵母を使いたくはない」。ワイン造りはブドウの生命との“対話”。自身の哲学には人の命と向き合う医学の志に通じるものがある。

英米2カ国の旅券を持つが、出身は中国北東部。両親を早く亡くし、父の親友だった英国の生化学者で「中国科学史の権威」と呼ばれ、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の初代自然科学部長を務めたジョセフ・ニーダム氏(1900〜95年)に育てられた。

英国で医師の資格を取得。ロンドンのクリニックで麻薬中毒患者の治療などに従事した。医学の道を目指した理由は、「論理的な学問なら中国なまりの英語が支障にならずトップを目指せると思ったから」。

10代でココ・シャネル氏(1883〜1971年)に見いだされ、ファッションモデルを経験。奨学金で通った大学時代は生活費を稼ぐため、英国放送協会(BBC)にアルバイト勤務しニュースを選別するジャーナリスティックな仕事も体験した。

渡米は結婚(のちに離婚)が機だった。カリフォルニアワインが世界的な脚光を浴びる以前の72年、夫所有のブドウ畑でワイン造りを始めて成功を収め、最初のワイナリーを売却。77年、現在のワイナリーを構えた。

それから約30年、手がけるワインはホワイトハウスの公式晩餐(ばんさん)会のほか、フランスで行われた革命記念の関連行事で提供されるなど知名度は米国内にとどまらない。

もう1つのライフワークである医療活動では、病院の小児科で週3回、無報酬の診療を続けている。約23万人が死亡・行方不明となった2004年12月のスマトラ沖地震とインド洋大津波の際はタイへ飛び、救援活動に参加。また大学でマーケティングなどについて教えているが、こちらも無報酬で、不遇な環境の学生の授業費などにあててもらっているという。

「ワイン造りだけでなく、小さいころから多くの人に助けられてきた。その恩返しがしたい」

実子はいない。だが寂しくはないという。「教え子が大勢いる。(次代を担う)子供たちに残すためにも、いいワインを造っていきたい」

人生の機微がワイン造りに表れている。

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