警察庁が、複数の子供を乗せても安全な自転車を開発するよう自転車業界に依頼した。しかし二輪車である以上、2人乗りでも危険で、同乗中にケガをする子供は後を絶たない。安全な3人乗り自転車の開発は可能なのだろうか。また道路整備や法整備は追いつくのだろうか。
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丸石サイクルの3人乗り自転車(イラスト) |
全日本交通安全協会の平成17年に行った調査によると、過去1年間に子供を自転車に同乗させた経験のある親の13・1%が、同乗時や駐輪時に子供にケガをさせている。そのうち2回以上事故を経験した親は28%にのぼっている。
前かごと幼児用座席を一体化させ、ふらつきにくい子供乗せ自転車「ふらっかーず」をヒットさせた丸石サイクル(さいたま市)は、二輪タイプの3人乗り自転車の試作品をすでに開発。後輪を小さくした後ろ乗せタイプに、前乗せタイプを合わせた形で、計約100キロまで乗車可能だ。ただし二輪自転車の特性上、とくに押し歩きをしたり、止めたりしたときにバランスを崩しやすい。
宣伝担当の座間知子さんは「実際に法律が変わったわけではないので、まだ発売予定はありません。警察庁の判断は歓迎しますが、危険な乗り方をしている人の対処をどうするか、疑問もある」と話す。
後ろ三輪の四輪自転車を開発中なのが「ランドウオーカー」(大阪府吹田市)。後ろ座席に子供2人を座らせて運転する。発売は今年6月ごろ。電動タイプもあり、6万円から10万円で販売する予定だ。
研究者からは「複数の子供を安定して乗せるには、普通自転車の基準(幅60センチ、長さ190センチ)を変更する必要がある」との声もある。
発明家のドクター中松氏はこのほど、4人乗りの四輪自転車を公開。幅115センチ、長さ280センチ、高さ170センチで、自転車というより車のサイズに近いが、ペダルを踏むだけで女性でも難なく進み、時速30キロが出る。
また特定NPO法人「自転車活用推進研究会」は、ヨーロッパで販売されているデンマーク・ニポラ社製の子供乗せ自転車を輸入する予定。幅85センチ、長さは203センチあるため、歩道の徐行が認められている普通自転車にはあてはまらず、軽車両として車道を走ることになる。
小林成基事務局長は「現実問題として、子供を乗せて(危険な)車道を走るお母さんはいない。普通自転車の基準をゆるめて、子供を安全に乗せられる自転車も歩道を徐行できるようにすべきです」と話す。
今月4日に警察庁から幼児2人同乗自転車の開発・普及について依頼を受けた業界団体「自転車産業振興協会」の小鷹狩幸一さんは「開発の中身については、これから調整していくことになる」としたうえで、現在の自転車を取り巻く最大の問題点は「自転車が安全に安定して走行できる専用レーンがないこと」と指摘する。
また都道府県によって、6歳未満の子供を同乗させる自転車同乗ルールや、三輪、四輪自転車の乗車定員などが微妙に異なる点も課題だ。小鷹狩さんは「これを機に、普通自転車の範囲や、都道府県ごとに分かれた乗車ルールについても統一されれば」と話している。