パリに住み、美容皮膚科の専門医としてフランスの大手製薬会社やクリニックの美容アドバイザーを務める。基礎化粧品の開発も手がけ、皮膚の自活力を高める健康的な肌作りを提唱。昨年秋からは日本での講演や執筆活動も本格化させた。肌の血行を良くし、小じわを防ぐツボ刺激マッサージは講演の参加者らに好評だ。
女性にとって健康的な肌作りは大切。年齢を重ねると肌も変わりますが、そういう変化を嘆かずに、積極的に向き合うと、肌は自然に美しくなろうとする。その潜在能力をアップさせるお手伝いができれば」
肌が自ら美しくなろうとする、肌本来の力を“肌エナジー”と呼んでいる。日本には美容情報があふれているが、「コスメに頼りすぎて、肌エナジーを弱めていることに気づいてほしい」と語る。
両親が医師という家庭に育った。自らも医師となり、26歳で医師と結婚、3人の男の子に恵まれた。ところが3人目を身ごもったころから、夫との間に感情のすれ違いが生じ始めた。
32歳の時、夫の留学が決まり、家族で南仏のトゥールーズへ移住。「私自身、医師の仕事から子育て中心の生活へ。環境が変われば夫とうまくいくのでは、と淡い期待を抱いて南仏へ行きました」。ところがこの移住は、意外な方向へ人生を導いていった。
トゥールーズの町で、ある女性と出会った。彼女はすでに夫と離婚し、働きながら6人の子供を育てていた。自分の悩みをぶつけると、「何とかなるものよ。人生一度きり。やり直すなら早いほうがいい」。
力強い言葉に励まされ、離婚を決意。「学生時代から関心を持っていた美容の道を、迷わず選びました」
人の幼子とフランスでの第一歩を踏み出した。37歳の時だ。
ハーブなどを用いたフランスの自然療法や予防医学を学び、7年前からパリを拠点に活動。日仏を行き来し、美容の専門知識の普及に努めている。
そして、これまで打ち込んできた皮膚理論の研究成果を応用し、角質層内部の細胞間脂質と構造が類似した、肌が受け入れやすい化粧品の開発につなげた。花のようなほのかな香りがする淡いピンクの化粧水などだ。
肌エナジーを効果的に発揮させるには角質層の保湿ケアだけでなく、化粧品の香りや色を五感で楽しみながら肌の手入れをすることが大切だという。
「毎日のお手入れを“気持ちいい”と感じてもらいたい」。日本の女性たちに、そう呼びかけている。