「ナイトスクープの爆笑VTRをつくるうえで、心がけていることは?」との問いに、「これは企業秘密でもあるんですけどお、まあ、楽しい絵づくりと申しましょうかあ〜、『動く紙芝居』だと思うんです。(画面の)フレームの中で、どうおどけるか? いらえるところは全部いらいます」。ひょうひょうとした独特の“節回し”を聴くと、なぜかうれしくなる。
一方で、少しまじめに「意外に細かい神経も使ってます。初めて素人さんに接するときは、満面の笑みで『長年のお友達ですよ!』という風に接します。そうすれば心を開いてくれます」とも。
今月でついに20周年を迎えた関西の超人気番組「探偵!ナイトスクープ」(ABC、金曜後11・17)の看板探偵。「気が付けば20年。まさかこんな『お化け』になるとは…」と話すが、「探偵の力量も、スタッフの力量もほかの番組とは違います。独特の空気感があって、ぼくらはまずその空気感をつくる。それが画面から伝わるんです」ときっぱり。自信が表れる。
依頼者(視聴者)のさまざまな依頼にこたえる同番組だが、「ハリセンボン(フグ)の針は本当に1000本あるの?」というような、まさに小さなネタを集めた「小ネタ集」や、「自然動物園」なのにタヌキやウサギしかいない、というような施設を面白おかしく紹介する「パラダイス」といった人気シリーズは“持ちネタ”だ。
それでも、これぞナイトスクープ、というVTRを聞くと、「やはりねえ、あの『爆発卵』ですねえ。世界中の、あらゆるVTRの中でもいちばん面白いですねえ」。電子レンジで加熱したゆで卵が爆発する、「謎の爆発卵」(平成5年12月)。再度放送された回と2度も視聴率30%を超えた。爆発する卵に、時に驚き、時におびえる小枝の表情も“爆発的”面白さ。
「(卵が)爆発するタイミングといい、素人さんのキャラといい、よくできてますねえ」
ときに、「これは面白いのかな?」と首をひねるようなネタもある。大げさなリアクションや展開、ついにはネタを替えてまでも面白いVTRにしなければならない。「力わざなり、なんなと使って成立させないと。わりとぼくなんかは得意ですけど…」。そう言って笑わせる。
「世間さまはあ、ぼくの落語をあまり見ておられないと思うんですが…。たまにやってるんです」。平成18年のイベント「彦八まつり」で実行委員長を務めたこともある。「結構落語も自信あるんです。『古典落語はこうあるべき』と縛られていた昔と違い、自由に変えてもいいんだと、『桂小枝がやればこうなる』と」。いい意味での“ゆとり”が感じられる。
「ナイトスクープはロケが楽しいし、まだまだがんばっていけると思います。でも、どの仕事でも『桂小枝』なんで。しゃべっても、怒っても…。これでやっていくしかないんです。ニュアンス、伝わります?」
はい、十分に伝わりますし、ファンもそれを期待しているはずです。
私の好きな言葉
色紙には、「お気楽に〜!」とひと言。「ぼく、しんどいことがいやなんですよ。楽しいことしかしないんですよ」と独特の調子で話すが、その真意は「いやな仕事が来ても、それをどうやったら楽しいか、と考える。どこかにポイントを置いて楽しむんですよね」という、ポジティブ・シンキングである。
ただ、あまり簡単に考えすぎてもいけない。「決して、無理から面白がるんじゃないんですよ。簡単なようで難しい。面白がる感性なんですよ」。だから、実は自身の中に課している“ハードル”は低くはないのではないか、とも思った。
とはいえ、今のナイトスクープについては「楽しい気持ちでロケができている。まだまだがんばりますよ」と話してくれた。ファンにはなによりのひと言だ。