人気歌舞伎俳優の片岡仁左衛門と坂東玉三郎、中村勘三郎の3人が4月2日から、東京・東銀座の歌舞伎座「四月大歌舞伎」で顔を合わせる。歌舞伎十八番「勧進帳」では、弁慶、義経、富樫役で初のそろい踏み。「刺青奇偶(いれずみちょうはん)」や「熊野(ゆや)」でも共演するなど、話題を呼びそうだ。
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(左から)片岡仁左衛門の弁慶、中村勘三郎の半太郎、坂東玉三郎の熊野 |
数々の名優が演じてきた「勧進帳」だが、脂の乗り切った人気者3人がそろうのは珍しい。東京では21年ぶりとなる仁左衛門の弁慶を軸に、20年ぶりとなる玉三郎の義経、10年ぶりの勘三郎の富樫という組み合わせ。
「私の弁慶もそうだが、玉三郎さんの義経も意外。勘三郎さんは『富樫をしたい』と言ってくれた。このトリオでは見納めかもしれませんね」と仁左衛門。
七代目松本幸四郎から指導を受けた父・十三代目片岡仁左衛門から教わり、他の俳優とは「所々違うところがある」という。たとえば、弁慶が花道で義経に呼ばれて返事をして座るところ、のぞかれそうになった勧進帳を富樫の目の高さに差し出すところ。ファンには見どころの一つだ。
3人は長谷川伸作の「刺青奇偶」にも、半太郎(勘三郎)とお仲(玉三郎)、鮫の政五郎(仁左衛門)で出演。
千葉で身投げした酌婦のお仲を助け、夫婦となった博奕(ばくち)打ちの半太郎。死病にかかったお仲は、博奕をやめさせようと腕にさいころの刺青を彫るが、半太郎は、政五郎と命を懸けた最後の勝負をする。
「せりふがよく書かれていておもしろい。半太郎はやくざだが、それでも人間なんだと思わせる」(勘三郎)
一方、歌舞伎舞踊「熊野」は同名の能をもとにした長唄作品で、平宗盛(仁左衛門)と愛妾の熊野(玉三郎)の物語。春の京都を舞台に病気の母を心配して故郷へ帰りたい女、清水での花見を楽しみたい男の思いが交錯する。
玉三郎は「(熊野の)気持ちが浮いたり、沈んだりしながら、華やかな雰囲気とはかない気持ちがひとつになるような作品になれば」と話す。
26日まで。「熊野」と「刺青奇偶」は昼の部、「勧進帳」は夜の部。問い合わせは(電)03・5565・6000。