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生活習慣や宗教…凝縮される民族衣装
「衣裳術」を出版 スタイリスト・北村道子さんに聞く
2008/3/28 産経新聞  東京朝刊 by 小川真由美
「服は武器。人生そのもの」。20作以上の日本映画で衣装を担当してきた日本を代表するスタイリスト、北村道子さん(59)が、その半生とともに衣装に対する独自の発想をまとめた『衣裳術』(リトルモア)を出版した。衣装や映画の考察から社会への痛烈なメッセージまで、読む者を引きつけてやまない刺激的な内容だ。


北村さんは高校卒業後、約3年かけてアメリカ大陸を縦横に旅した。ベネズエラ、グアテマラなどの山岳民族に出会い、その土地の慣習に従って旅を続けるうち、人間にとって衣装が道具であることに気づいたという。

『衣装術』の表紙は映画「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」の伊勢谷友介
「人間は裸で生まれてきたのに、なぜ布を織り、まとうのか。民族衣装を着ている人は貧しくても、スローで穏やかで、そして美しい。そこには今の生活習慣から宗教、何千年の民族の歴史などすべてが凝縮されている。世界中を旅して気づいたのは、人は皆、それぞれ自分が歴史だということ。だから一生が学問だし、人間が一番面白い」

初めて映画の衣装を担当したのは昭和60年公開の「それから」(森田芳光監督)。主演の松田優作の指名だったという。以後、数々の映画を担当した。『衣裳術』では、浅野忠信、オダギリジョー、伊勢谷友介らが着た北村さんの衣装がまとめて紹介されている。

北村さんは「松田優作は普段は酒ばかり飲んでいたけれど、映画のために体を一日で絞ることができた役者。才能ある役者は必ずいい肉体を持っている。服をまとう肉体も衣装の一部」という。

でも、今後は映画と少し距離を置くそうだ。

「哲学、比較人類学、建築、宗教…すべてを総動員しないと映画は作れない。だからワンシーンの美しさにこだわって服も徹底してやれる。でも今の日本映画は、テレビとの線引きがない。タレントなのか政治家なのかという線引きもないから、誰もが何でもできると思っている。だからとっても浅い。それが腹が立つんだよね」

ファッションとは流行を追うのではなく、例えば10年前の洋服をアレンジして自分自身でモードをつくることだと考えている。

「裸で生まれてくる人間は、着る服次第で何にでもなれる。だから服は武器。でも武器として服をどう着こなすか、その判断は目利きでないとできない。だから若いうちに、絵画でも食事でも何でもいい、本物をたくさん自分の目で見て味わっておいたほうがいい」

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北村道子

きたむら・みちこ 昭和24年、石川県生まれ。高校卒業後、渡米。20代前半は雑誌や広告でスタイリストとして活動。衣装を担当した映画は「それから」をはじめ、「東京日和」(竹中直人監督)、「殺し屋1」(三池崇史監督)、「アカルイミライ」(黒沢清監督)、「メゾン・ド・ヒミコ」(犬童一心監督)など20作以上。昨年公開の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(三池監督)で毎日映画コンクール技術賞受賞。アメリカ在住の長男(41)は水質学、二男(40)は地質学の研究者。

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