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宙組「NEVER SAY GOODBYE」製作発表
「最後の幕が下りる瞬間まで私らしく」
12月2日(金) ENAK編集部
宝塚歌劇団は2日午後、東京都内のホテルで宙組公演「ミュージカル『NEVER SAY GOODBYE〜ある愛の軌跡〜』」の製作発表記者会見を行った。米国の作曲家、フランク・ワイルドホーンが全曲を手がけるのが話題。歌劇団によると、日本のミュージカルの楽曲すべてを米国の作曲家が担当するのは、日本の演劇史上初めて。和央ようか花總まりの宙組トップコンビの退団作品になる。3月24日から宝塚大劇場公演(5月8日まで)。5月26日から東京宝塚劇場公演(7月2日まで)。

会見に出席した和央ようか(右から2人目)、花總まり(左)、フランク・ワイルドホーン(左から2人目)、小池修一郎(右)=東京都内のホテル
会見に出席した和央ようか(右から2人目)、花總まり(左)、フランク・ワイルドホーン(左から2人目)、小池修一郎(右)=東京都内のホテル


会見には和央と花總の宙組トップコンビのほか、作品の台本・作詞を担当する演出家の小池修一郎、そして来日中のワイルドホーンが出席した。

恋の逃避行をするカメラマンと女性作家がやがてスペイン内戦(1936−39年)に巻き込まれ、平和を求める戦いに加わっていく物語で小池は「劇作家リリアン・ヘルマン(1905−84年)、あるいはヘミングウェイ(1899−1961年)ら当時スペイン内戦に関わったインテリたちをミックスして架空の人物に仕立て、現在ストーリーを練っているところです」と説明した。

ワイルドホーンは歌手、ホイットニー・ヒューストンの全米ナンバーワン曲「プロークン・ハーツ」を手がけたほか、ナタリー・コール、ケニー・ロジャース、ジュリー・アンドリュースやライザ・ミネリらに楽曲を提供。近年はミュージカル作品も数多く手がけ、「ジキルとハイド」はトニー賞にノミネートされている。

「NVER SAY GOODBYE」製作発表


1日に宝塚大劇場で花組公演を観劇したというワイルドホーンは宝塚の印象について「ワオッのひとこと。美しい」と絶賛。「私は常に世界を視野に入れた仕事をしており、今回の依頼も喜んで引き受けました。音楽に国境はありません。(和央は)今まで私が仕事をしてきたアーティストたちと同様、ハートで感じながらうたうことができる」と、終始笑顔だった。

小池によると、ウイーン劇場協会の仕事を通じてワイルドホーンと知り合った。歌劇団側が外国の作曲との協業を望んだので打診したところ快諾された。ふたりはすでに「ミツコ」という国際交流基金関係の音楽劇の製作でコンビを組んでおり、「Never Say Goodbye〜ある愛の軌跡〜」は2作目の共同作業になる。

この日は劇中歌「NEVER SAY GOODBYE」をワイルドホーンのピノ伴奏で和央が独唱したが、いかにも米国の王道ポップスというできばえ。カッチリとまとまった美旋律が繰り返され、転調部分で大きく展開し、最後は非常に高い音を伸ばして静かに消えるように終わる。

これが退団公演となる和央は「最後の作品で、世界的に著名なワイルドホーンさんの楽曲をうたわせていただくという、新たな挑戦ができることを大変幸せに思っています。最後の幕が下りる瞬間まで私らしくがんばってまいります」と力強く語った。

劇中歌「NEVER SAY GOODBYE」をフランク・ワイルドホーンのピアノ伴奏で歌う和央ようか=東京都内のホテル
劇中歌「NEVER SAY GOODBYE」をフランク・ワイルドホーンのピアノ伴奏で歌う和央ようか=東京都内のホテル


花總も「最後になりますこの作品、全力でがんばってまいります」と誓った。

会見では退団に関する質問は禁じられた。会見後の懇親会で、退団公演ということで取り組む気持ちに違いはあるかとENAK編集部が投げかけた問いに和央は、「いつもと同じ。せいいっぱい取り組みたいです」。キリッとした口調、さわやかな笑顔で答えた。

会見の一問一答は次のとおり

和央ようか この公演の千秋楽をもって、宝塚歌劇団を退団させていただきます。世界的に著名なホーンさんの楽曲をうたわせていただきますことをとても光栄に思っております。最後の作品で新たな挑戦ができて大変幸せです。最後の幕が下りる瞬間まで私らしくがんばってまいりたいと思います。

劇中歌「NEVER SAY GOODBYE」をフランク・ワイルドホーンのピアノ伴奏で歌う和央ようか=東京都内のホテル
劇中歌「NEVER SAY GOODBYE」をフランク・ワイルドホーンのピアノ伴奏で歌う和央ようか=東京都内のホテル


花總まり 私も来年7月2日の東京宝塚公演千秋楽で歌劇団を退団させていただきます。最後になりますこの作品、全力でがんばってまいりたいです。

小池修一郎 和央と花總の宝塚生活最後の作品になると同時に米ニューヨークで活躍されている作曲家と仕事ができて光栄です。

フランク・ワイルドホーン ちょうど「ジキルとハイド」も日本で公演中ですので来日しました。すばらしい生徒たちとこの“作品の旅”をともにできて光栄です。これが最初の一歩となり、今後もこうした関係が続くことを望んでいます。

──作品のテーマは?
小池 27年前、宝塚で「誰がために鐘は鳴る」(星組 鳳蘭主演)という作品がありました。ヘミングウエーの原作。スペインの内戦を扱っているのに興味をもったものです。それから日本人が米国に住んでいて参戦したことがジャーナリスティックに取り上げられた。それから私はジャック白井(米国人義勇兵の一員としてスペイン内戦に参戦した日本人)のことを宝塚で描きたいという考えもありました。つまりファシズムが台頭する中で、これと戦おうとする民主勢力として当時の青年たちが志に燃えてスペインに集まり義勇軍を作った。そのドラマに感動しましたからです。また、異境で暮らし、人生の意味を見いだすような生き方にも興味があるのです。異境の地で自分を見つけ、がんばる人たちに。今回の(ワイルドホーンとの)海を越えたコラボは、そうしたテーマにもふさわしい。

笑顔で受け答えした花ちゃん


──カメラマンと女性作家が主人公
小池 作家、リリアン・ヘルマン(1905−1984年)の伝記には彼女がジャーナリストとしてスペインに行ったときのことが触れられておりまして、当時の米国の進歩的なインテリたちはスペイン内乱に大変興味をもち、たくさんの人がでかけていった。その人々を私なりにミックスして架空の人物に仕立てました。カメラマンというとロバート・キャパ(1913−54年)が戦場カメラマンとして名をなしましたが、むしろマン・レイ(1890−1976年)のような1920−30年代に時代をリードしたアーティストが内戦の地に行ったらどうなったかというファンタジーに興味がありました。義勇軍と出合ったらどうなるかを想定してストーリーを練っているところです。

──ワイルドホーン氏は宝塚の作曲依頼をどう受け止めましたか?
ワイルドホーン お礼をいいたい。私は常に国際的な舞台を意識してきました。もともとはポップス畑出身でホイットニー・ヒューストン、ケニー・ロジャース、ナタリー・コールらと一緒に仕事をしてきて、演劇のために作品を提供することになったとき、これについても世界的な活動を視野に入れました。小池さんと出会ったのは、ウイーンで幕開けする「ミツコ」を通して。彼とは非常に波長が合う。その彼から声をかけられて、飛びつくように引き受けた。音楽に国境はありません。

──花組公演を観たそうですが、感想は?
ワイルドホーン ワオッ! 適当な日本語はあるかな? 超一流の作品で楽しかった。(宝塚大)劇場は、まるで一大“帝国”のようだし。芝居もレビューも大変な刺激を受けた。

たかこさんとはなちゃん ──和央さん、ワイルドホーンについては?
和央 海外ミュージカルを原作とした作品に出演したことはありますが、宝塚のほうで作品を作り、その音楽を世界の第一線の作曲家に作っていただけることは今までありませんでした。お話をうかがったときは、本当にそういうことがあるのかな? と思ったぐらいです。こういう機会をいただきましたことを心から感謝しております。

──ご本人にお会いになって
和央 偉大なアーティストに曲をいっぱい提供している方なので、実はとても緊張していましたが、すごくカジュアルに接してくださって、緊張がかなりときほぐされました。

──花總さんは?
花總 最初にお話をうかがったときは、とにかくすごいと思いました。ホイットニー・ヒューストンやナタリー・コールに楽曲を提供されている方が、全曲を書いてくださるなんて夢のような話。信じられません。期待を裏切らないようにしなければいけないと緊張しております。

──ご本人にお会いになって
花總 とてもフレンドリーに接してくださって、優しい気持ちにさせていただけました。ちょっとホッとしたような。

──ワイルドホーンさん、和央、花總の印象は?
ワイルドホーン ビューティフル! きのうピアノで歌のけいこをしましたが、今まで接してきたアーティスト同様ハートで感じながらうたうことができる。小池さんが書いた詩的で美しい歌詞を理解しながら歌っている。

──「NEVER SAY GOODBYE」という歌について
和央 ピアノで伴奏していただいて、しかも、すばらしい曲で、これからフランクさんの音楽に包まれて公演できるかと思うとうれしいです。

花總 きのう(和央と)お稽古なさっているところを見て、まず曲がほんとうにきれいだと思いました。聴いているだけで心から自分がきれいになれるような曲。これからどんどん彼の世界に入って美しくなっていければ。

──音楽について、小池はどう考えるか?

小池 ほんとうにいい意味で米国的、名前どおり“フランクな”方なんです。この作品では、“時代を超えて残る愛のあかし”をテーマの奥の方に入れておきたい。そういうテーマを大変温かい、愛情にあふれた音楽で包んでくれるのではないかと、とても楽しみにしています。

──今回のテーマ、コンセプトは
ワイルドホーン 小池さんからいただくものによって、ふくらませます。その歌で何を伝えたいのか。小池さんの考えを思い浮かべながら深夜、ピアノに向かって作りはじめています。「ミツコ」を一緒に作ったとき、とても共感できる人物描写をいただいた。新たな人物を描くための資料を小池さんからもらえることを楽しみにしています。

たかこさんとはなちゃん


──ワイルドホーンさん、宝塚用に書きおろすことについて意識したことは?
ワイルドホーン 作曲家の仕事はふたつある。ひとつは作品につくすこと。作品における感情的な高まりなどのための音楽を提供する。ふたつめは、歌い手の声のもっともすばらしいところを引き出すこと。今までもライザ・ミネリ、ジュリー・アンドリュースらと仕事をしてきたが、今回はこうして新しいふたりと出会えました。ほかの生徒たちも含めて最上のものをみなさんにお見せします。









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