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大阪夕刊1面 編集余話
宝塚とベルばら
10月3日(月)〜15日(土) by 平松澄子

「『ベルサイユのばら』は宝塚歌劇の『忠臣蔵』だ」といわれる。かつて邦画は、オールスターキャストの「忠臣蔵」を上映すれば、必ずヒットするという時代があった。邦画界の事情はすっかり様変わりしたが、宝塚歌劇におけるこの“切り札”は、いまだに健在である。

現在、宝塚歌劇の「ベルサイユのばら」は、星組による全国ツアー公演の真っ最中。大阪からスタートして、関東、東北、北海道と21日まで回るが、どこでもチケットは完売のフィーバーぶりだ。


宝塚歌劇は来年、5年ぶり4度目の“ベルばら”イヤーを迎える。「ベルサイユのばら」の主人公のひとり、悲劇のフランス王妃、マリー・アントワネット生誕250周年を記念しての上演だ。

宝塚大劇場では、元日初日の「−フェルゼンとマリー・アントワネット編」を星組で上演し、続いて2月10日初日の「−オスカル編」を雪組で上演するスケジュール。原作は同じだが、公演ごとに視点や主人公を変え、さまざまなバージョンで見せるのが、長く人気の続く秘訣でもある。


「ベルサイユのばら」の原作は、池田理代子の人気劇画。フランス革命(1789年)という歴史の激動期を背景に、華やかなロマンスと悲恋を描いた長編大河である。

主要人物は4人。断頭台で処刑された美貌(びぼう)の王妃マリー・アントワネット、その恋人でスウェーデン貴族のフェルゼンという実在の人物に、王妃付き近衛隊隊長で男装の麗人のオスカル、彼女を愛する乳兄弟のアンドレという架空の人物がからんで展開する。

宝塚歌劇がこの劇画をミュージカル化して初演したのは、昭和49年8月29日だった。


月組が初演した「ベルサイユのばら」(昭和49年8月)は、ショーとの2本立て。主要キャストは、フェルゼン=大滝子、アントワネット=初風諄、オスカル=榛名由梨、アンドレ=麻生薫。金髪をなびかせ颯爽(さっそう)とした男装の麗人、オスカルが爆発的な人気を呼び、輝かしい“ベルばら”ブームのきっかけとなった。

まるで劇画から抜け出たような出演者たち。榛名は「劇画のイメージをこわさないよう、扮装(ふんそう)や化粧を必死に工夫した。幕が開くまでファンの反応が怖かった」と語った。


花組による「ベルサイユのばら−アンドレとオスカル−」は1本立て大作として、昭和50年7月に上演。初演で人気沸騰した榛名由梨はアンドレ役にまわり、オスカル役の安奈淳とのコンビを中心に、男装のオスカルがドレス姿に変身して踊るシーン、バスティーユの戦闘で死んだアンドレとオスカルが天国で結ばれるラストシーンなどが新たに加わった。

同年8月からは雪組が、オスカル=汀夏子、アンドレ=麻実れいのキャストで続演。“ベルばら”ブームは一気に加速して、社会現象にまでなったのである。


昭和51年3月から上演した星組の「ベルサイユのばらIII」は、フェルゼン=鳳蘭とアントワネット=初風諄が中心の物語。2人が出会う仮面舞踏会のシーンなどもあってより華やかな仕上がり。オスカル役が、星組の順みつきに加えて、榛名由梨、安奈淳、汀夏子と“歴代オスカル”が特別出演したことも、大きな話題を呼んだ。

これで花、月、雪、星と4組(当時。現在は宙組を加えた5組)すべての上演を達成。その後も地方公演などを行い、“第1次ベルばらブーム”は55年5月まで続いた。


宝塚歌劇は昨年、創立90周年を祝った。大正3年に第1回公演を行って以来、紆余(うよ)曲折はあったものの、現在に至るまで絶大な人気を誇っているのは、「ベルサイユのばら」の功績が大きい。

それまで一部の熱烈なファンに支えられていた宝塚歌劇を、広く一般にまで認知、浸透させ、2000人規模の大劇場を連日満員にした。さらに“ベルばら”ブームが次の大作「風と共に去りぬ」の大ヒットにつながり、“宝塚ブーム”に拡大したのである。


“第2次ベルばら”は平成元年−3年。フランス革命200年を記念した“平成の「ベルサイユのばら」”として、全4組(当時)が次々に上演して人気が再燃。当時のスターは杜けあき、一路真輝、日向薫、大浦みずき、涼風真世らだった。

“第3次ベルばら”は平成13年。東京に宝塚大劇場とほぼ同規模の専用劇場、新・東京宝塚劇場が開場したことで、“21世紀版ベルばら”として上演された。稔幸主演の星組と、和央ようか主演の宙組が、宝塚と東京の両劇場で史上初の東西同時公演を実現したのである。


宝塚の園に3たび咲いた「ベルサイユのばら」。これまでの総上演回数は合計1446回、通算の観客動員数は356万4000人で、宝塚歌劇史上最高の大ヒット作になっている。

演出家の植田紳爾(前歌劇団理事長)は「“ベルばら”には観客が宝塚に求めている要素が内包していると思う。ただ、“ベルばら”を上演すれば観客が入るという安易な考えはない。再演も、再々演も不安で怖かった。いつも、そのときの最高の作品をお見せできるよう、必死のエネルギーで作っている」と話している。

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来年、5年ぶりに上演される“4度目のベルサイユのばら”は、湖月わたる主演の星組と、朝海ひかる主演の雪組に、春野寿美礼(花組)や瀬奈じゅん(月組)ら現在の宝塚歌劇を代表する各組のスターが、交代で特別出演するのも話題。

先ごろ東京で行われた制作発表では、フェルゼンやオスカルらの扮装(ふんそう)をしたスターたちの等身大のパネルが、ズラリと並んで迎えた。報道陣も複数のテレビクルーや新聞、雑誌などの記者を合わせて200人余りが集まり、注目度の高さを見せつけた。

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星組で現在、全国ツアー公演中の「ベルサイユのばら」「ソウル・オブ・シバ!!」は、続いて11月11−13日に韓国・ソウルでも上演する。今年が日韓国交正常化40周年にあたることから招聘(しょうへい)され、宝塚歌劇の初めての韓国公演が決まった。

海外公演は和洋ショーの二本立てがほとんどだが、「“ベルばら”は韓国でも原作の劇画の人気が高く、要望があった」(歌劇団)という。きわめて宝塚的な芝居の“ベルばら”が、韓国でどう受け止められるか興味深い。(おわり)


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