宝塚大劇場で8月3日から始まる月組公演のスピリチュアル・シンフォニー「MAHOROBA〜遥か彼方・YAMATO〜」で、タカラジェンヌOGの謝珠栄が初めて作・演出・振付を担当する。久しぶりに民族舞踊にスポットを当てたショーで、クライマックスシーンの楽曲を気鋭の津軽三味線奏者、上妻宏光が初めて担当するのも話題。主演のトップスター、瀬奈じゅんを交えて、3人に抱負や意気込みを聞いた。
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「このショーでは小林一三先生(歌劇団の創始者)がバリ島の王宮から持ち帰られたガムランも使います」という謝と、上妻、瀬奈(右から)
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「宝塚歌劇は時代を超えて伝承されてきた伝統芸能の歴史があり、貴重な資料もいっぱいある。なのにこのところ民族舞踊はずっとやっていない。宝塚でしかできない、洋楽のリズム感や華やかさを織り込んだ、民族色の強いショーをやりたいと思ったんです」と謝。
昭和46−50年に、「隼あみり」の芸名で花組に在籍したダンスの得意な男役。退団後はニューヨークにダンス留学して、53年に振付家デビュー。平成13年からTSファンデーションを主宰して、演出家としても多彩に活躍している。宝塚では平成10年の「黒い瞳」以来、柴田侑宏作品の演出・振付を数回担当しているが、1作品を全部手がけるのは今回が初めて。「光栄です。OGの振付家は多くなったけれど、作・演出はまた違う道。生徒たちの気持ちもわかるし、これからもっと出てきてほしいですね」と語った。
「MAHOROBA」は神々の誕生から、YAMATO国の英雄オウス(瀬奈)がクマソ征伐、東国への遠征などを経て倒れ、真っ白なサギに姿を変えて甦るまでを、日本の四季の美しさ、豊かさを交えて描く。9場構成のうち吹雪の中でオウスが倒れるクライマックスの第8場を、上妻の楽曲で盛り上げる。
「主人公はヤマトタケルで、ひたむきな純粋性が魅力。剣舞のシーンに津軽三味線の乾いた音をぜひ使いたいと、上妻さんにお願いしたんです。宝塚時代に出演した『この恋は雲の果てまで』(昭和48年)でそんなシーンがあり、いつかやってみたいと思っていたんです」と謝。
津軽三味線の伝統と革新を追求して、他ジャンルとのセッションも多い上妻だが、宝塚とは初めて。特別に低音が出るよう工夫したベース三味線とふつうの津軽三味線を何度も重ね録りし、尺八を加えた約5分の楽曲に仕上げたという。
「お話をいただいて、瀬奈さんの舞台(「パリの空よりも高く」ほか)を初めて見たんです。立ち居振る舞いのかっこよさは見習うことが多い。伝統ある劇団の歴史に威厳と後光を感じました。どんな舞台になるか、すごく楽しみです」と上妻。

瀬奈は「謝先生はきびしいけれど、愛情あふれる気持ちが作品に現れている。台本を読んだときに、ワーッと涙が出たんです。私も初舞台が『この恋は雲の果てまで』(平成4年再演)で、津軽三味線での剣舞シーンにはゾクッと鳥肌が立ちました。今、この時期の巡り合わせは、やるべき縁を感じます。三味線の音って心をわくわくさせる何かがある。オウスの魂をその音に乗せて踊りたい」と決意を述べた。
「マジシャンの憂鬱」との2本立てで、9月17日まで。東京公演は東京・日比谷の東京宝塚劇場で10月5日から11月11日まで。