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新緑が映える花の道で笑顔を見せる北翔海莉さん。初夏の日差しが彼女をつつむ=兵庫県宝塚市の花の道 |
北翔海莉(ほくしょう・かいり)さん、月組研究科6年。
現在公演中の『花の宝塚風土記(ふどき)』と『シニョール ドン・ファン』に出演している。『シニョール〜』の新人公演では初の主役となるレオ・ヴィスコンティを演じた。
北翔さんが宝塚を志望したのは千葉県に住んでいた中学生のとき、担任の先生から「背が高いから受けてみれば」と言われたのがきっかけ。
歌劇団の名前は知っていたが、自分とは無関係の世界だと思っていた。
1次試験は通過したものの、面接で基本的な質問に答えられず試験官を唖然とさせ、不合格を確信する。
合格発表にも行かず、高校の入学式に出席していた。たまたま関西に出張中の父が掲示板の中に、娘の名前を見つけて合格を知る。
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『シニョール ドン・ファン』の新人公演でレオ・ヴィスコンティを演じる北翔さん。迫力ある演技はたゆまぬけいこの成果=宝塚大劇場 |
あわてて宝塚に駆けつけた北翔さん。入学手続きを済ませ、2回目の入学式を経験した。
しかし、厳しい授業は想像以上。
レッスン中に涙がこぼれ、もうやめたいと思ったことも。
そんな時、父が「泣き言を言わず不合格になった人の分までがんばるのが当たり前だ」と厳しい言葉で娘を叱り励ました。先生からは「せっかくの合格、挫折しないでがんばってほしい」と諭された。周囲の励ましに支えられ、人の3倍を目標にけいこに励んだ。最下位といわれた成績も、卒業を迎えるころには上位に食い込んでいた。
今、「お芝居が好き、一から始めたけれど本当に好き」と笑顔を見せる。厳しいけいこを積み重ね、新人公演の主役をこなすまでに成長した。
1回きりの新人公演、真剣勝負の気迫が観客の心を熱くする。自分の限界を求めてステップを踏む彼女の瞳が輝いた。
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スターを彩り宝塚の舞台を支える豪華なドレス。公演のたびに客席を魅了する美しい衣装を抜きに宝塚は語れない。
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宝塚に夏の足音−。さわやかな雰囲気が初夏を感じさせる宝塚大劇場のテラス |
そんな宝塚の舞台に、華やかな話題がまた1つ加わった。『シニョール ドン・ファン』では、トップデザイナーとして活躍するコシノヒロコさんが、宝塚の衣装を担当したのだ。
伝統を損なう事なく、新しい試みを続ける歌劇団。その前向きな姿勢が多くのファンの心をつかんで離さない。
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