暗転がなく次から次へと変わる、宝塚歌劇のきらびやかな舞台装置を生み出す第一人者。今年はすでに「タカラヅカ絢爛」(関連記事:大劇場公演評)などショーを3作品手がけたが、毎年、バラエティーに富んだ十数作品の装置を担当している。
「ウチの得意技は舞台転換のスピードの早さと、品格のある華麗さ。1シーン2分ぐらいで吊り物を多用して、視覚的にどんどん変えていく。ケバくゴテつかないためには、出演者や照明、衣装などのバランス、色のコーディネートで上品に美しく見せることが基本。ショーは発想とイメージの勝負で、ドラマは演出家の個性に合わせる必要がある。どの作品でも1つの“目玉”を作って、幕が開いた瞬間に観客をつかむことが大切。セットだけの舞台で拍手が起こったときはうれしいですね」と雄弁に話す。
昭和18年、大阪生まれ。洋画家を目指したが、恩師に舞台美術のほうが向いているとすすめられて、武蔵野美大造形学部産業デザイン科へ。卒業後、テレビ局やCMフィルムの会社などを経て、宝塚歌劇の大道具や照明を手伝うようになり、45年「青春のプレリュード」で装置デザイナーとしてデビューした。
「大道具のアルバイトで入ったのがきっかけでしたが、鴨川(清作)先生(演出家)に声をかけてもらい、それから静間(潮太郎)先生(装置&衣装デザイナー)の助手について勉強しました」
51〜52年にはブロードウェーやロンドンで研修。代表作は「グランドホテル」「ブラックジャック」「凱旋門」など多数あり、「エリザベート」で平成9年に舞台美術家協会奨励賞を受賞している。
海外公演の経験も豊富で、一昨年の第2回中国ツアー公演では現地のスタッフを指導してセットを作った。昨年の「薔薇の封印」では宝塚大劇場で初めてLEDのスクリーンを使うなど、斬新なアイデアマンでもある。
「LEDをドラマで使うのは冒険でしたがね。僕はゴルフに囲碁、将棋など趣味が多くて、何にでも好奇心の塊。新しい技術や気になるものがあると、すぐに調べて使いたくなる」とエネルギッシュだ。
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