キューバから高名な振付家のアルフォンソ氏を招き、海から甦(よみがえ)った妖精たちが繰り広げるトロピカルなショー「タカラヅカ絢爛」の作・演出を担当。星組での公演(関連記事:東京公演始まる)に続いて、25日初日の月組公演でも「タカラヅカ絢爛II」を上演する(8月9日まで、宝塚大劇場)。今回は新トップ、彩輝直(あやき・なお)のお披露目公演でもあり、大きく2場面を変えたそうだ。
「ぼくの作品は“再演”に縁があるんですよ。その組や主演者の特性を生かすのは座付き作家の仕事。彩輝の中性的でフェアリー(妖精)な魅力に合わせた新たな振付を、またアルフォンソさんにお願いしました」
座付き作家としての腕の見せ所である。
昭和18年神戸生まれ。甲南大文学部を卒業して、41年歌劇団に入団した。
「画家志望でしたが美大に落ちて、鬱々と哲学を専攻したんです。就職を心配した父が、知り合いだった白井鐵造さん(演出家)に道をつけてくれましてね。初めて見た宝塚歌劇はすごくきれいで、舞台が大きなキャンバスに思えたんです。ここで絵が描けるなーって」
46年の大劇場「ハレルヤ」で演出家デビュー。52年「ザ・レビュー」(第3部夢人)で芸術祭優秀賞を受賞。その後、西サモアを描いた「パパラギ」など、オリエンタルでエキゾチックなショーで独自の世界を築いた。57年にバウホール「永遠物語」で初めてドラマの脚本・演出を手がけ、再演を繰り返す名作を生み出している。
「宝塚のショーはパリやアメリカが主流。若いころは人のやらないことをするのが、芸術の独創性やと息巻いていたんですよ」
平成4年のニューヨーク公演「TAKARAZUKA 夢」など海外公演の作品も多く手がけ、手塚治虫原作「火の鳥」のショー化も話題を呼んだ。8年に歌劇団理事に就任。
「ぼくの人生は、幸運なめぐり会いが積み重なった奇跡ですね。宝塚が90周年を隆盛で迎えられたのも奇跡で、これが100周年へと続いてほしい。宝塚はショーを除くと他の劇団と変わらなくなる。後進のショー作家の育成が、ぼくの残された仕事だと思っています」
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