宝塚歌劇創立90周年に就任したトップスター。芸名の如く、彩(いろどり)も鮮やかに、最高に輝くときを迎えた。トップ・デビューとなった全国ツアー公演「ジャワの踊り子」を終えて、宝塚大劇場でのお披露目公演「飛鳥夕映え」「タカラヅカ絢爛II」の稽古(けいこ)に没頭している。
「『ジャワ−』の初日は、緊張を超えてカチンコチンでしたが、歴史に残る名作に巡り合えて宝塚のすばらしさを再認識できました。大劇場の初日(25日)のことを想像すると、やはり緊張を感じるし、あの大空間で発するエネルギーは、もっとすごく必要だなーって思いますね」
「飛鳥夕映え」は日本史上の大事件、大化の改新で殺された蘇我入鹿(そがのいるか)を新しい視点からとらえて、ドラマチックに描く歴史ロマン。役作りのために、奈良県の明日香村にも行ってきたという。
「奈良は中学の修学旅行以来でしたが、飛鳥寺の大仏様などを見ていると、とても神聖な感じがして、鳥肌が立ってきました。舞台で描かれる入鹿は、聡明(そうめい)で行動力があり、大きな夢を持っている心根の広い人物。とても魅力的な超2枚目なんですよ」
「タカラヅカ絢爛II」は星組からの続演になるトロピカルなショーで、彩輝は海から甦る妖精の役。キュートで中性的な彼女の魅力に合わせて、新たなダンスシーンも作られた。
「星組が大人っぽい、色気のあるコンビなのに対して、月組は初恋のカップルみたいっていわれます。私は洋物のショーが久しぶりになるので、楽しみですね」
相手役の娘役トップ、映美(えみ)くららはこの公演で退団することが決まっている。「彼女の決断をちゃんと受け止めて、最後まで関係性を深めて成長していきたい」と前向きに考えているそうだ。
ミュージカル「ピーターパン」を見て芸能界にあこがれ、「背が高いから宝塚を受けてみたら」と知人にすすめられて、2度目のチャレンジで平成2年に入団した。2年目に「ベルサイユのばら」東京公演の新人公演でアンドレ役に抜擢されて以来、常に注目を浴びてきた期待のスター。小顔でスラリとした舞台姿が美しく、男役の定番である燕尾(えんび)服もスーツもよく似合う。
「いろんなことでクヨクヨ悩んだこともありましたが、宝塚にいてよかったと思える自分になるまではと、考え直してきたんです。トップが決まったときはとてもうれしかった。宝塚の90年の伝統は本当に奥が深い。受け取ったバトンを次につなぐまで、明るく元気でエネルギーを持って前に突き進むをモットーに、大らかで繊細な舞台人を目指します」
彩輝直(あやき・なお)
横浜市出身。平成2年、「ベルサイユのばら」で初舞台。翌年、月組に配属され、「ME AND MY GIRL」新人公演のジョン卿などで魅力をアピール。8年、星組にかわり、「二人だけが悪」「エリザベート」の新人公演で主役を演じた。10年に「夜明けの天使たち−悲しみの銃弾−」でバウホール初主演。「WEST SIDE STORY」のベルナルド役はかっこよかった。
12年6月に新専科制度で専科となり、宙組公演や星組の中国ツアー公演にも参加。15年10月に月組に戻り、今年3月で退団した紫吹淳のあとをうけて、4月の全国ツアー公演「ジャワの踊り子」からトップに就任した。
愛称・さえこ。4人姉妹の長女で、末っ子も月組の彩那音(あやな・おと)。宝塚大劇場のお披露目公演「飛鳥夕映え」「タカラヅカ絢爛II」は25日−8月9日。 |
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