宝塚歌劇が誕生した1914(大正3)年。欧州では第一次大戦が始まろうとしていた。その一方で、パリは世界中から多くの芸術家たちが集ったベル・エポック(華やかな時代)。「1914/愛」(谷正純作・演出)は、そんな宝塚のルーツの時代のパリを舞台に描く青春群像劇だ。
主人公はロートレックの絵から抜け出てきたような、黒ずくめのスタイルに赤いマフラーをなびかせたアリスティド・ブリュアン(湖月わたる)。シャンソン酒場の経営者でシンガー&ソングライター。「金を払いやがれ! 貧乏人ども」などの悪口雑言が売り物で、絶大な人気を誇る。
ドラマはそんなブリュアンと、貧しい芸術家たちに支援者を紹介する謎の伯爵夫人アデル(檀れい)の愛の行方を中心に、まだ無名の詩人アポリネール(貴城けい=雪組)、画家のモディリアーニ(大和悠河=宙組)、ユトリロ(真飛聖)、シャガール(立樹遙)らの姿を交えて描く。
有名な実在の人物たちがフィクションで膨らみ、舞台で生き生きと躍動する。ワイルドで颯爽(さっそう)とした湖月が頼もしく、コメディーではないのに、間のよさで随所で笑いが起こる楽しさも十分。それにも増し、創立90周年を隆盛で迎えた宝塚の歴史と進化のすごさを、改めて痛感した。
ラテン・ファンタジー「タカラヅカ絢爛−灼熱のカリビアン・ナイト−」(草野旦作・演出)は、海の中から蘇った妖精たちが繰り広げる、熱く元気いっぱいのショー。これでもかというぐらい電飾を使った装置がきらびやかだ。
妖精ポノポ(湖月)が蛇の化身クレブラ(柚希礼音)と体をくねらせて踊る「夢」、別れの前に愛し合うポノポと人間マリア(檀)が踊る「ハリケーン」など、キューバから招いた振付家、サンティアゴ・アルフォンソの担当シーンが、ユニークで目新しい。また、貴城、真飛らが縄跳びのダブルダッチに挑む「ハバナ」も必見。
2作品とも、星組トップ・コンビの湖月、檀の大きさ、華麗さがよく生かされ、他組からの出演者の見せ方にも、ベテランの座付き作者ならではのうまさがある。
|