ほんとうは会うつもりはなくて、柱の陰からでもこっそりと相手がくるかどうかを確かめるつもりだったふたりは、結局、空港のカフェで鉢合わせしてしまう。「あなたがどうなったか気になって」「じゃあ、僕と同じだ」。クラブから追放されたカルロス(春野寿美礼)。ミルバ(ふづき美世)もゴメスのもとを飛び出してきていた。ゴメスの妻、アリーネからゴメスの“ゴースト画家”になるよう迫られ、それを断って飛び出してきたのだ。「助かったかもしれいな。君に会えて」「同類がいたから?」「ひとりでいるよりいいってこと」「でもどちらかが成功していたら、自分もがんばろうって思えたかもしれない」「やたら前向きだなあ」。そう。ふたりとも、けっして落ち込んだりはしない。だからといって、妙に力んだりもしない。「ああ、一生、動物園のペンギンしか見られないのかな」。動物園の中のペンギン。それは、運命にとらわれた私たち自身? 「まあ、また何かにでくわすさ、生きてりゃ」
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