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宙組   姿月あさと    
04.01産経新聞夕刊  演劇コラムニスト 石井啓夫


 「最後ですね」とよく、その感想を聞かれますけど、今年一−二月の宝塚大劇場公演の前から、おけい古場も最後、振り付けも歌のレッスンも、何につけても「最後」になるわけで、舞台にしても、宝塚の公演を終えても、こうしてまだ、東京公演をやっているし、最後だ、悲しい、とか思う気持ちは起こりません。

 自分が辞めていく悲しみより、宙組の仲間と過ごす今の時間を充実して、楽しむことの方が大事です。五月七日の千秋楽の日には、ああ、本当に辞めちゃうんだァ、もう二度と戻れないんだとひそかには思うかもしれないけど、今現在では、悲しみはありません。

 だから、お芝居やショーの場面でどこが一番、好きですか? 宝塚生活を最後に振り返って、これまででもっとも好きだった作品は何ですか? ともよく、聞かれますけど、こたえは、全部です。どれが気に入って、どれは気に入らなかったっていうのではなく、どれかひとつなんて選び切れないということです。

 今はただ、宙組の人たちの温かさ、わたし自身よりもわたしが辞めることを悲しんでくれる人たちの優しさを感じて、現在の自分の立場の責任感を考えながら、宙組の仲間とかかわれるどの場面も大事に務めていくだけです。あと一カ月と少しあります。宙組の舞台をよろしく、お願いしま〜す。

                 ◇

 姿月あさと(しづき・あさと)1987年、初舞台。花組配属の後、93年に月組へ。98年1月の香港公演を経て、新設の宙組の初代トップスターに。現在公演中の「砂漠の黒薔薇」(写真=アリシャール王子)、「GLORIOUS!!」で退団する。代表作に「シトラスの風」「エリザベート」他。


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