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花組   大鳥れい    
07.15産経新聞夕刊  演劇コラムニスト 石井啓夫


 「源氏物語」の世界を演じられるなんて、すごく幸せです。十二単(ひとえ)におすべらかしの髪、衣装もカツラも重いけど、平安時代の宮廷衣装に身を包んで舞台上に出ていると、たしかにちょっとおしとやかな女性になったような気がします(笑い)。

 気に入りのシーンは、お芝居にしてもショーにしてもわたしたちには全部で、どれが? なんて、とても選べませんけど、特にと聞かれれば、やはり第十七場の「法会」のところ。お芝居の最後のシーンに当たります。死期をさとった、わたしが演じる紫の上が、「陵王の舞」を舞います。

 気持ちがいいったら、ありません。男舞になっていて、男性の振りですから、激しくりりしく、踊っていて気が引き締まります。龍が彫られた仮面をかぶって、光源氏の前で舞うのです。愛するお方には、わたしがだれか分からなくて、わたしはお面の角度を踊りながら、少しずつ変化させ、悲しさ、寂しさ、怒り…の表情を表現します。最後に力尽きて倒れ込むと、源氏の君が抱き寄せてくれて、そこでお面がとれ、わたしが紫の上だと分かります。

 前の「夜明けの序曲」の時と反対、愛華(みれ)さんの源氏に抱かれて息絶えるんです。なんて、幸せ者なんでしょう(笑い)、わたし。本当にいいお芝居に出させていただいていると実感する毎日です。

                  ◇

 おおとり・れい 平成5年、「BROADWAY BOYS」で初舞台。花組のトップ娘役。演技派で、11年、愛華みれとのトップコンビお披露目作「夜明けの序曲」の貞奴役が評判を呼んだ。現在、東京花組公演に出演中。


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