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専科   匠ひびき    
2000.07.22産経新聞夕刊 演劇コラムニスト 石井啓夫


 現在出演中の花組公演で、お芝居のほうの「源氏物語 あさきゆめみし」の第十一場「準太上天皇即位式」のところ、かなぁ。全部力入れてるけど、ここの部分はね、わたしが演じている頭の中将の心の奥底を感じさせるシーンです。

 小さいころから、身近で親しく遊び、育ってきた光源氏と頭の中将ですけど、ここへきて一気に身分の差を思い知らされる場面なんですね。もちろん、左大臣家のわたしの役と源氏とは身分が違うことは分かっているはずなのに、いざ、天皇に次ぐ位に就いてしまった源氏を目の当たりにしたとき、さみしさや、きっと少しのしっと心もあったと思うんです、そんな手が届かないところへ行ってしまった、かつての友への心情をセリフと歌で、銀橋(宝塚独特の弓形のエプロンステージ)を渡りながら表現する場面なんです。

 シリアスなシーンですが、この舞台、原作のマンガに忠実に、わたしのカツラも金髪にしていますから、「源氏」の世界は黒髪でという観念からは離れてご覧になっていただけるとうれしいです。烏帽子(えぼし)をかぶって登場しているシーンが多いから、金髪も見えているわけでもなく、わたしとしては、日本物での色染めカツラといった気分。そういう見栄えで表現する光源氏とのからみに注目してください。

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 たくみ・ひびき 昭和62年、「宝塚をどり讃歌」で初舞台。ダンスの名手として、花組で活躍したが、今年6月の異動で準トップから専科入り。代表作に「チャンピオン」「白い朝」ほか。現在、花組東京公演に出演中。


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