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月組   霧矢大夢    
2000.07.29産経新聞夕刊 田窪桜子


 バウ・ミュージカル「更に狂はじ」(大野拓史作・演出)で中世の能楽師・世阿弥の養子の観世三郎元重=写真=を演じています。宝塚では珍しい能の世界が舞台。元重は、純粋に能を舞うことが好きで、舞ってさえいられたら満足という、弟思いの男です。

 弟の世阿弥の実子、観世十郎元雅がタニ(大和悠河)です。大野先生が「ただ兄弟が対決する物語にはしたくなかった」と話していらしたように、能楽師が南北朝の陰謀に巻き込まれていく姿が主軸です。史実とは違いますが、歴史を少し知っていると、より楽しめると思います。

 音楽は和洋折衷、洋楽で能を舞う場面は宝塚ならではですね。プロローグで、能の「朝長」を舞います。日舞のおけいこはしていますが、能と日舞は違う。大事な見せ場なのですが、能は動きが少なくて、動いていない“静”の部分で表現するのが難しい。ほかにも鼓を打つ場面では、本当に自分で打つなど、いろいろ挑戦しています。

 元雅のほうは情熱的な恋に走るのですが、元重は恋愛に絡まないので、これはちょっと寂しいかな(笑)。でも、シリアスで影のある大人の男の役は七年目にして初めて。普段の性格も芸風も落ち着きがないタイプといわれますが、今回は抑えた演技の中にパワーを感じさせ、男役の新境地を開きたいですね。

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 きりや・ひろむ 平成6年、「火の鳥」で初舞台。歌、踊り、演技の三拍子そろった新進男役。昨年、「ボサ・ノバ・ボサ」の新人公演で主役をつとめ好評を博する。「更に狂はじ」は、8月2日まで、東京・千駄ヶ谷の日本青年館大ホール。問い合わせはTEL03・3212・1221。


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