「源氏物語 あさきゆめみし」では今回、信じられない体験をしています。
本公演では、初めての女役イコール母親役でもある「明石の上」、新人公演では「光源氏」をやらせていただきました。毎日、光の君を思う「明石の上」を演じながら、一日に行われた新人公演では、その「明石の上」を愛する光の君ですから、気持ちの集中度が大変でしたけど、なんといっても日本人ならだれでも知っている「光源氏」を、ああ、なるほどとお客さまが納得される存在感とパッとした華やかさで登場したいと思って頑張りました。いかがでしたでしょうか。
本公演で印象に残るところといえば、第10場「紫の上と明石の上」のシーン。わたしの「明石の上」が産んだ「ちい姫」が宮中に入内する場面で、「紫の上」の養女とされているわが娘の晴れ姿を、母娘と名乗れずに見守る気持ち…。
悲しいというより、平安時代では、皇族の中で立派に育っていく娘の姿を見て、うれしいのだと思いながら役作りをしました。わたしとしては、実際の自分の母親のことを想像したり、知り合いの方から、「どんな子供であれ、自分が産んだ子はかわいいものよ」といわれたことなどを参考にしました。
十二ひとえの着物姿は大変でしたけど、女役もたまにならいいかなと思っています(笑い)。
◇
あやぶき・まお 平成6年、「火の鳥」で初舞台。雪組から、10年に花組に異動。濃淡自在な演技派として、期待大の男役。歌唱力も十分で、現在上演中の花組東京公演「源氏物語 あさきゆめみし」新人公演では、主役の光源氏に。