「凱旋門」は映画も白黒時代のものだし、暗いですよね。この舞台でも、わたしが演じているドイツ人の亡命者で外科医のラヴィックは喜怒哀楽が激しく、性格も決して明るいほうではありません。それに照明もいつもより、ぐんと暗いし。でも、わたし、大人っぽい役をやりたかったから、レマルクの原作を読み、やりがいがある役だと気に入っています。お客さまの見方もいろいろとは思いますが、好きになってくださる方、多いんじゃないかと思っています。
見どころは、今回は回り舞台が多用されていて、舞台上にたくさんの登場人物が出て雰囲気を盛り上げていること。中堅から下級生まで、一生懸命にそれぞれの役を演じているところも見逃さないでくださいね。
わたしのところで、しいてどこが? と聞かれれば、とても難しい個所ですけど、第7場「悪夢の影」の後半。ゲシュタポを見つけて、愛と復しゅうとに心が揺れるさまを見せながら、さまよい歩くシーンです。矢代鴻さんがBGM的に歌をうたってくださっていて、人込みを避けながら、悩む姿を出しています。セリフも声の出し方の強弱もしぐさも…ぜんぶ、わたしが好きなようにできるところなんです。一人だけの演技場面ですから、日々、演じ方が違っているんですよ。気づいてくださるかしら?
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とどろき・ゆう 昭和60年、「愛あれば命は永遠に」で初舞台。月組から雪組を通して、硬軟自在な芝居心でスター街道を歩む。平成9年、トップに。「浅茅が宿」「ノバ・ボサ・ノバ」他、和洋達者で、歌唱力も抜群。現在、東京公演に出演中。