「凱旋門」の東京公演ではジョアンの心情を明確に出しながら、綿密な感じで表現することを心がけました。新たなジョアン像を見ていただきたいなと思っています。
映画や原作は、ラビック(轟悠)と恋に落ちる前にもう一度会っているのですが、舞台では二度目に会ったときにすでに一夜を共にしたあと。だから、最初の出会いから、ラビックを好きになる気持ちを意識的に表に出すようにしています。轟さんがとても大人の雰囲気を持っていらっしゃるので、それにあわせた深い情感も出したいですね。
ジョアンは、女性特有の本能で生きていて、単純でストレート。そのあたりが男性からみると憎めなくて、魅力的なのではないでしょうか? でも、女性からは反感を持たれやすいタイプ。女性のお客さまにも、魅力を感じていただくように演じるのが難しいですね。
実は、ジョアンを演じる前に、ひとりでパリにも行ってきました。町を歩いて空気を肌で感じるうちに、パリだったらこういう大人の恋もあるだろうなあと思いました。音楽もすごくすてきです。そんなパリの情景とかも、すっと伝わってくるような曲で、音楽で感情が動かされます。
リアリティーがあって、かつ宝塚らしいロマンティックな場面もある。やればやるほど奥が深くて楽しい芝居です。この時期に、こういう作品を出させていただけたことも、幸せに感じています。
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つきかげ・ひとみ 平成2年、「ベルサイユのばら」で初舞台。4年の「スパルタカス」から5作品連続で新人公演のヒロインをつとめる。9年、星組の娘役トップとなり、翌年、雪組に組替え。娘役トップとして幅広い役柄で活躍している。