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それでも私は私の道をゆく
宝塚月組公演「ESP!」公演評   
010614産経新聞大阪夕刊 斎藤勝行


 スター誕生と退団の新陳代謝は、今年で87年の歴史を刻む宝塚歌劇団の宿命。

 その21世紀最初のトップスターのサヨナラ公演が、まず1月に東京で展開した後、半年遅れて地元・宝塚大劇場に戻ってきた。

 東京では新劇場の開場を祝う舞踊ショーを出したが、宝塚では新作ショー「ESP!!」が、退団するトップスター、真琴つばさ=写真中央=のために特に制作された。

 現職に失礼だという配慮から次期トップを伏せておく、これまでの慣習を改めて、専科に異動していた紫吹淳=同後=を月組に戻して舞台で堂々とトップ昇格宣言。

 さらに娘役トップの檀れい=同前=が専科に入る異例の人事もあって、客席はお別れを惜しむ気持ちと3人の新たな第一歩を祝福する拍手が交錯、複雑な雰囲気を漂わせている。

 エンターテイナーに徹した真琴は一段と気合が入り、自ら作詞した「あなただけのESP!」(西村耕次・作曲)を熱唱、さらにフィナーレでエンビ服姿で歌う「マイウェイ」に自らの気持ちも重ねて、熱いものを感じさせる。

 ショーに不可欠の意表をつくシーンも豊富で、音楽もダンスも心地よい。汐風幸らバリバリの二枚目男役を束にして女装で登場させるのも楽しめる。

 構成・演出=酒井澄夫、演出=木村信司。

 ミュージカル「愛のソナタ」(木村=脚本・演出)も男(真琴)が女に化ける意外性が生む笑いをねらった喜劇。男役は女性が演じる架空の男、それが女装をしても不思議なことに本来の姿に戻らない。むしろ非日常性が増幅する効果は期待出来るが、残念ながら下敷きにしたオペラ「ばらの騎士」はベッドシーンのため息が強烈な艶笑話で、女性が演じるには無理がある。

 7月2日まで。


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