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ダイナミズムよりも安定感
「ベルサイユのばら2001--フェルゼンとマリー・アントワネット編」劇評
   
010508産経新聞大阪夕刊 斎藤勝行




 「ベルサイユのばら」は、昭和四十九年の初演でブームを巻き起こし、平成元年の再演でも熱い支持を集めた、タカラヅカの大看板作品である。

 今回は史上初の東西同時公演で、先行した東京・星組公演の初日に三百万人の通算観客動員を達成、東西とも前売りチケットは完売…など、話題と人気が盛り上がる中で、宙組の「フェルゼンとマリー・アントワネット編」が開幕した。

 フランス革命の血なまぐさい史実を彩るスウェーデンの伯爵、フェルゼン(和央ようか=写真右)とアントワネット(花總まり=写真左)のつかの間の恋。

 さらに男装の麗人で王妃付の近衛隊長・オスカルと、その乳母の孫で幼友達のアンドレが登場。この架空の人物が織り成す友情と恋のロマンや悲劇的な死が、いかにもタカラヅカ的といわれ、熱狂的な人気を生み出す源泉にもなっている(アンドレとオスカルは水夏希と専科の彩輝直が公演期間の後半で交替)。

 原作(池田理代子の同名の劇画)に沿ったオーソドックスなバージョン。もはや古典といってもよい作品だけに、ロココの時代の大きなコスチュームや舞台装置の量感、フランス革命によって君主制と貴族社会が崩壊する時代のダイナミックなうねりに負けない大仰な様式的な演技が要求される。

 歴代の“ベルばら役者”の華やかな伝説がインプットされ、自らも新人公演の主役や本公演に出演した体験もある和央は、ソツなくまとめ、安心して見られるが、芝居が小さく、ブランド物ならではのだいご味に欠ける。

 和央は客席と正対するのが苦手のようで、体全体から発するアピール度が弱い。

 花總も客席に向けようとする意識はみえるものの、姿勢は横に立つ相手役に向きがち。所作にゆったりとした大時代な雰囲気を出す一段の工夫と、退場の際にも気持ちを客席に預ける余裕が必要だ。

 十四日まで。


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