二十五日夕べ、東京・有楽町のTAKARAZUKA1000days劇場で、「逸翁デー」が開かれた。
逸翁とは、宝塚歌劇の創始者、小林一三の雅号。
その業績をたたえ、しのぶため、創立八十五周年を記念した昨年から恒例行事になった。
逸翁は昭和三十二年一月二十五日、八十四歳で亡くなっており、命日に行われることになったのだ。
本拠地の宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)でも、同日、開催された。
この行事、またの名を「タカラヅカ・ホームカミングデー」ともいって、宝塚卒業生を招き、トークや歌を披露する。
東京では、現在公演中の星組「我が愛は山の彼方に」「グレート・センチュリー」の舞台終演後、南風洋子、峰さを理をゲストに始まった。
南風は昭和二十四年入団で、「今でも現役でミュージカル舞台にも出演できるのは、音楽学校時代の若いときに体力をつけさせていただいたおかげ」と、宝塚教育の効果を話していた。
次に峰が登場すると、ちょっと場内がざわめいた。いきなり、大階段の中程から歌いながら現れたからだ。しかも、黒のタキシード姿で現役男役時代をほうふつとさせる、大きく周囲を包み込むような朗々とした歌いぶり。
インタビュアー役のトップスター、稔幸が照れまくって、小さくなっていたのもうなずける。稔が入団した六十年、峰は星組トップですでに大スターだった。しかも、峰が五十九年に二代目朴秀民で上演した「我が愛−」を、現在、稔が三代目を引き継いで公演中である。
「峰さんの秀民を本科生のときに見て、あこがれていました…」と、稔。「え〜っ」と驚く峰に客席は大笑いだったが、さらにびっくりしたのは、主題歌を峰が歌ったこと。♪遥かなる山脈に…と歌い出す宝塚の名曲。少しも衰えぬ抜群の歌唱力で、情感を込めて銀橋まで歩きながら歌うさまは、「ホームカミング」の趣旨そのまま、峰演じる高麗軍の武将、朴秀民がここにいるような印象だった。
峰の歌唱力は宝塚時代から評判だった。もちろん今でも女優、歌手として活躍中。二月四日から十日まで、銀座博品館劇場「THE SINGERS」に主演する。「逸翁デー」は、宝塚出身者の多彩さ、大きさを再確認させられるときでもある。
000131産経新聞東京夕刊