八月の博多行きが、恒例の夏休み行事となりそう。
じつは、九州の福岡市博多区に、昨年六月開場した博多座の八月公演は、宝塚歌劇に定着しそうなのだ。
昨年八月は、開場披露公演シリーズの三番目として、星組が「我が愛は山の彼方に」と「グレート・センチュリー」を上演した。宝塚公演では珍しい地方からスタートした舞台で、その後、本拠地の兵庫県宝塚市の宝塚大劇場に回り、東京のTAKARAZUKA1000days劇場へ来た。
オープンした博多座見学と福岡初演の久しぶりの宝塚の名作を早く見たいがため、わたしは出掛けて行った。
今年の八月は、月組の「LUNA」と「BLUE・MOON・BLUE」。
昨年が宝塚伝統のロマンチックな芝居とレビューだったのに対して、今年は宝塚新路線を象徴するような現代劇とショー。いわばニュー・タカラヅカといった舞台である。
月組のトップスター、真琴つばさは「オーソドックスな去年のお芝居と比べたら、こちらは異端児的な作品。でも、新しい風を巻き起こそうと挑戦している今の宝塚を見るって気持ちで来ていただきたい」と、盛んにアピールしていた。
インターネットだ、遺伝子組み換えだと現在ただ今の話題を、現実に町中に出ればごろごろいる若者の男女そのままの扮装(ふんそう)で、タカラジェンヌたちが舞台を駆け回る芝居だから、朝鮮の高麗を舞台にした昨年の武将と姫君の悲恋物語とは百八十度の変わりよう。
劇場関係者も心配だったと告白していた。
しかし、行って驚いた。満員の観客と舞台のノリのよさ。拍手、手拍子、爆笑…。
「前売り二日前に、公演期間の全席が完売しました。博多座開場以来の新記録です」と、劇場関係者が驚いていた。芝居の内容以上に、宝塚の豪華けんらんな雰囲気が喜ばれているらしい。
連日、立ち見客が押しかけているのも、劇場側にはうれしい悲鳴。
宝塚一のエンターテイナーで、観客サービスがうまい真琴が、にわか博多弁を駆使したアドリブを連発、博多っ子を沸かしているのも要因だ。
五、六月の東京公演も、うなぎ上りに人気を呼んでいたが、「いつも舞台から元気を伝えたい」と張り切る真琴の情熱が、博多座満席記録を樹立させたといえる。
000814産経新聞東京夕刊