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コンビ講座
--「幼妻カップル」と「熟年カップル」--

宝塚歌劇11−12月東京公演は、星組新トップコンビのお披露目舞台。男役スター、香寿たつきと娘役スター、渚あき主演の『花の業平』、『サザンクロス・レビューII』の2本立てである。本拠地である兵庫県宝塚市の宝塚大劇場の舞台を踏まず、東京宝塚劇場からというのは、8−9月の月組新トップコンビ披露公演『大海賊』、『ジャズマニア』の紫吹淳、映美くららと同じ形態だ。

面白いことに、香寿と紫吹は昭和61年初舞台の同期生。実力を誇りながらも昇進が遅れ、今年そろって待望の頂点を極めた。2人とも、文句のないトップスターで、さらに面白いことに、相手役にそれぞれ、初恋のヒトを選んでいる。紫吹は、3年前の初舞台公演となった月組『ノバ・ボサ・ノバ』で、入団したてで隅の方でキラキラと輝いていたという映美を見染め、香寿は雪組時代、新人公演『この恋は雲の涯まで』で渚と初コンビを組み、バウ公演初主演となった『セ・ラムール』でも相手役が渚だった。

それから、2人とも数度、組み替えを経験し今、香寿が入団16年目、渚が14年目。香寿は、先日開かれた初日パーティーの席で、「初恋のあきちゃんと、やっと結ばれました」といって、会場を沸かせた。また面白いことに、紫吹=映美が13期離れた「幼妻カップル」に対して、香寿=渚は上級生同士2期違いの「熟年カップル」という話題も提供している。

ところで、香寿と渚が現在、主演している『花の−』は、宝塚ならではの王朝ロマン。「伊勢物語」のモデルといわれる希代のモテ男、在原業平と時の権力者、藤原一族の姫君、高子との許されぬ恋を描いている。狩衣姿もりりしい業平とおすべらかし髪に平安女御衣装の高子の美しさは、まず歌劇でしか味わえないけんらんとした見栄えである。

じつは、この業平、今年1月に宝塚大劇場で前トップの稔幸が演じた役。稔のフワッとした桃花の温かさと趣を変え、香寿にはキリリとした梅花のせつなさがにおっていた。高子も1月の星奈優里が哀しい幻想性に包まれていたとすれば、渚には、政争の道具にされる女の悲劇を悲しむ現実感が強く感じられた。演じ手によって、見方によって、同じ物語を2倍も3倍も楽しめる。いい作品だ。

そしてこの組、上から下まで、みんなうまい。プロローグで香寿につづいて、初風緑、汐風幸、安蘭けい、夢輝のあ…やがて渚が加わって物語へ…と見ていると、各組で実力を磨いてきた主演級ぞろい。

初恋の2人、劇中では悲恋に終わるが、トップコンビとしては、長年の恋心を美しく花開かせたのだ。

011204




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