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天海祐希講座
--退団後のあり方の考察--

 先週に続いて、舞台復帰した天海祐希について−。

 天海は今、宝塚を退団して初めての舞台「マヌエラ」(三十一日まで、東京・渋谷のPARCO劇場)に出演しているが、天海が演じているマヌエラという女性の生き方が、女優・天海とけっこうダブっていることに興味を覚えた。

 マヌエラとは、実在した日本人ダンサー(八十七歳で、健在)の芸名で、ダンサーとしてのスタートは松竹楽劇部(後のSKD)。しかも、あのターキーこと水の江瀧子と同期の第一期生である。事情があって、松竹楽劇部はすぐに辞めてしまうが、その後、上海に渡り現在、上演中の舞台で描かれているような〈伝説のダンサー〉となった。

 さて、マヌエラ。気が強くて、意思貫徹型の女性。天海も、そっくり。

 近年の宝塚で人気ナンバーワンを誇った天海は退団後、女優になってなぜ、舞台に出ないのかとさんざん、いわれ続けた。が、天海は最初から、舞台には出ないといっていたわけではなく、宝塚を辞めてしばらくは出ないつもり、といっていただけ。一見、そっけなくポツリといってしまうから、舞台を避けていたのかと思われがちだが、退団後すぐに舞台に立つくらいなら、好きな宝塚をやっていますよという主張だろう。

 そこが、いかにも天海流で、舞台とは違う映像世界で、彼女自身の可能性やあふれる好奇心を満足させたかったに違いない。

 だれになんといわれようが、思われようが自分で決めた道を歩むのが女優・天海である。

 踊ることこそわが人生と、魔都と呼ばれた戦前の上海にまで行ってしまったマヌエラの情熱に、天海が共鳴するのがよくわかる。

 天海は、この舞台出演にあたって、「理由はわからないけど、新作にこだわっていて、そこで出合えたイイ作品だから選んだ」と語っていた。「似合う似合わない、できるできないじゃない、やりたいと思う気持ちが大事だと思う、ヘヘヘ」ともいっていた。最後のヘヘヘがくせ者で、そんな口調のときの天海は心中で納得し自信がある証拠。浅草生まれ、江戸っ子のテレ表現だ。

 そういえば、マヌエラの初舞台が浅草だ。どこかに縁がある、ドラマチックな女性の人生をなぞっている天海、イイ舞台に出演している。 

990118産経新聞東京夕刊




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