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花組育ち講座
--最初に誕生した組のパワーをめぐる考察--

 スティーヴン・ソンドハイム作詞、リチャード・ロジャーズ作曲で、台本がアーサー・ローレンツといえば、それだけでミュージカル・ファンなら「見たい!」と思う作品が今、東京・天王洲アイルのアートスフィアで上演中である(二十三日まで)。

 「ワルツが聞こえる?」(福田美環子翻訳、勝田安彦演出)。

 ひと夏のバカンスを楽しみに、ひとりベネチアに来たハイ・ミスのアメリカ人と、家庭があるイタリア人男性の恋を、けっこう無責任にポイッと見せる物語。恋の自由に対する国民性の違いがベースにあって、恋してしまったが相手に家族があることを知って悩むアメリカ女性と、現実に愛してしまった事実が大切と相手を求めるイタリア男の思考の対照が、恋愛の本質を提示していて、現在の日本の若い男女の恋愛感に刺激を与えそうだ。

 三十四年前にブロードウェーで初演された作品。わたしは初めて見たが、ほろ苦い大人の恋物語を演じている俳優たちの歌のうまさに、ミュージカルそのものを安心して楽しめた。主演の大浦みずき、草刈正雄を筆頭に、園岡新太郎、福麻むつ美、松岡英明、詩乃優花、香坂千晶、そして大原ますみ…。次々と歌われるナンバーがみな、心地よく聞こえる。

 そんな舞台を見ながらふと、おもしろいことに気づいた。出演者のうち、大浦と福麻、詩乃、香坂は宝塚出身で、ともに花組で同時期を過ごした人たち。この花組というイメージが頭に浮かぶと、今、八十五周年に沸く宝塚をリードしているスターたちが、花組育ちだらけということに思い至った。大浦は入団時は違ったが、花組のトップとして退団、女優になった。

 では、現況の宝塚では−。

 東京公演が始まっている本家花組の愛華みれ−匠ひびき−大鳥れいの主演トリオはもちろん、花一筋。

 月組に目を移せば、トップの真琴つばさ、二番手の紫吹淳、初風緑の三スターが花からの異動組、雪組の娘役トップ、月影瞳と二番手の香寿たつき、汐風幸も花育ち。

 それに宙組の初代トップスター、姿月あさとも花出身者。

 「花はどこへ行った」という歌ではないが、宝塚の花組はまず、最初に誕生した組だけにどこへも行かず、宝塚の内外で、華やかに花を咲かせているのである。

991122産経新聞東京夕刊




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