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専科   匠ひびき    
Mostly Classic Dec/モーストリー・クラシック12月号 田窪桜子



たくみ・ひびき 87年、「宝塚をどり讃歌」で初舞台。花組に配属。早くからしなやかなダンスと端正な容姿で注目を集め、本公演のショーで活躍する。
 95年、「チャンピオン」でバウホール公演初主演。昨年「夜明けの序曲」で準トップに。今年は「あさきゆめみし」で光源氏の親友・頭の中将を演じた。6月、専科に配属後、「トム・ジョーンズの華麗なる冒険」では古典のコメディーに挑戦した。兵庫県出身。愛称はチャーリー(撮影・大山文兄)

 宝塚に入ってからは、その時々の気分で何でも聴くようになりました。

 音楽って面白いもので、落ち込んでいるときに思いっきりバラードを聴いて徹底的に落ち込んでみたり、反対に元気な曲を聴いて「まあいいか!」って立ち直ったりできる。

 自分が舞台に立つときは、セリフやダンスと一緒に、音楽のそういう部分が伝わればいいなあと思っています。

 好きなのは"渋い系"の歌。人生経験の重みが歌詞に出るようなね。私よりもっと年輪を重ねた方の曲を聴くと、「そうなのよ、そういうことが言いたいのよね」っていう気持ちが、ズバリと刺さってくる。

 あとは、癒し系のクラシックやオルゴール曲が心をなごませてくれます。

 私にとってクラシックというと、やはりバレエとバレエ音楽になりますね。4,5歳でバレエを始めたのですが当時はクラシックは踊るもので、聴くものとは意識していませんでした。音楽に合わせて踊りが激しくなったり柔らかくなるなあという感じで、楽しんでいましたね。

 好きなダンサーは、シルヴィ・ギエム。でも、宝塚の舞台に生かすというタイプじゃないでしょ。だからミュージカルを見て、その出演者が歌や踊りもをこなしながら、どう役の心を表現していくかに興味あります。

 舞台ってCDとは違って、目で楽しむ要素が大きい。舞台での音楽はその総合点すべてをひっくるめてのものでなくてはと思っています。

 今、演じている「ルートヴィヒII世」の精神科医・グッデン博士は、悪魔的でミステリアスな年齢不詳の雰囲気という設定です。せりふも語尾が重要で、その余韻によってルートヴィヒが苦しんでいく。演じるにあたっては、まず声を変えて低音を響かせようと考えました。聴く音楽も激しくて低音のものが多かったですね。ミュージカルで例えると「オペラ座の怪人」のラストシーンとか。何かを奪い取るような、強気になれるような音楽でした。

 実は先日、ふらっとリラクゼーションに行ったんです。ヘッドホンをして鳥の声や川のせせらぎ、うっすらと流れてくる心地よい音楽などを聴きながら大きく息をしたら突然、呼吸をするってこういうことだったな、忙しくて忘れていたなって気づいて涙が出てきた。本当に不思議ですよね、音楽って。こんな風にそのままの自分に戻してくれる力もあるんですよ。


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