宝塚ファンにはたまらない舞台だ。東京・新宿コマ劇場で上演中の『桜祭り狸御殿』(十日まで)。今年元旦に新装オープンした東京宝塚劇場完成記念として企画されたもので、出演しているのが宝塚出身の女優ばかり。美吉左久子、大路三千緒の大先輩をのぞけば、昭和四十九年の『ベルサイユのばら』初演から再演(平成元−三年)までに、それぞれ一時代を築いたスターたちが次から次へと登場してくる。もう、メロメロになってしまう。
今、現役タカラジェンヌによる三度目の『ベルばら』が上演中だが、『狸御殿』も豪華けんらん。宝塚歌劇団がもう一つ、誕生したような雰囲気だ。楽しい。おかしい。懐かしい。物語も宝塚そのものである。オリジナルは、木村恵吾監督の戦前の和製ミュージカル映画『狸御殿』で、宝塚では昭和三十二年に初演している。
満月城の若君、狸千代(鳳蘭)と夕月城のきぬた姫(汀夏子)との縁談が、化かし化かされる大騒動の果てに、メデタシメデタシとなる話。途中、悪いタヌキやら役者タヌキやら、いろいろ現れる。今回、演出にあたっている植田紳爾と酒井澄夫が、宝塚芝居の見本を見せている感じ。初演同よう、中元清純の美しく、リズミカルな音楽も興趣を盛り上げる。