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OG   桜祭り狸御殿    
010403産経新聞夕刊 演劇コラムニスト 石井啓夫

桜祭り狸御殿
 宝塚ファンにはたまらない舞台だ。東京・新宿コマ劇場で上演中の『桜祭り狸御殿』(十日まで)。今年元旦に新装オープンした東京宝塚劇場完成記念として企画されたもので、出演しているのが宝塚出身の女優ばかり。美吉左久子、大路三千緒の大先輩をのぞけば、昭和四十九年の『ベルサイユのばら』初演から再演(平成元−三年)までに、それぞれ一時代を築いたスターたちが次から次へと登場してくる。もう、メロメロになってしまう。

 今、現役タカラジェンヌによる三度目の『ベルばら』が上演中だが、『狸御殿』も豪華けんらん。宝塚歌劇団がもう一つ、誕生したような雰囲気だ。楽しい。おかしい。懐かしい。物語も宝塚そのものである。オリジナルは、木村恵吾監督の戦前の和製ミュージカル映画『狸御殿』で、宝塚では昭和三十二年に初演している。

 満月城の若君、狸千代(鳳蘭)と夕月城のきぬた姫(汀夏子)との縁談が、化かし化かされる大騒動の果てに、メデタシメデタシとなる話。途中、悪いタヌキやら役者タヌキやら、いろいろ現れる。今回、演出にあたっている植田紳爾と酒井澄夫が、宝塚芝居の見本を見せている感じ。初演同よう、中元清純の美しく、リズミカルな音楽も興趣を盛り上げる。

桜祭り狸御殿
 とにかく見て、再現される「黄金の宝塚」を懐かしむに限る。ファン・サービスもたっぷり。劇中劇構成の『ベルばら』や『風と共に去りぬ』には、大笑いさせられるし、フィナーレが、凄い。男役を決める鳳が、その原点となった『星の牧場』から『今もお前が』を歌い、汀と踊る。榛名由梨が男役経験者を従え、男役ダンスの艶を披露する。峰さを理−高汐巴−寿ひずるの『落葉散る丘の小径』の歌の情感、大原ますみ−城月美穂−若葉ひろみ−麻乃佳世−森奈みはる−秋篠美帆とつなぐ『花の中の子供たち』の歌のかれんさ。二幕あたまの真織由季のソロも聴かせた。

 なぜ、こんなに心地よいのか、実は複雑な気持ちになる。多分、近年のタカラヅカが時代を反映して、すべての面でTAKARAZUKAという英語綴りのイメージになりつつある中で、ここにはまごうことなき、本道「宝塚」と呼べる漢字の息遣いがあるからだ。

東京公演は4月10日終演。大阪公演は4月14−26日、梅田コマ劇場で。

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