 |
木村信司 |
|
小田島雄志訳の「シェークスピア全集」を読み、大学生のとき独力で戯曲を書き始めた。東京以外の就職先を探していて目にした募集が「製造業・宝塚歌劇団」だった。
「大道具や小道具を“製造”すると思って受けたら、1次試験で戯曲を書いてくるように言われ、2次試験で演出家をやると初めて知ったんです」
この試験の課題戯曲が、後のデビュー作「扉のこちら」になった。同期は演出家の中村一徳。演出助手が少ない世代で、すべての先輩の現場についた。
「現場主義で勉強しながらも、ずっとひっかかっていたのが演出家としての専門の勉強をしたことがないことでした」
平成9年には海外研修でニューヨークに行き、研鑽(けんさん)を重ねた。
上演中の宙組「鳳凰伝」は、オペラ「トゥーランドット」が下敷きになっている。
「愛にはただきれいごとだけではなく、嫉妬(しっと)や犠牲などさまざまな形がある。『鳳凰伝』は命がけの愛の話。宝塚歌劇団のテーマが愛だとすれば、その愛の一面を何作も何作も追い求めていきます」と話す。
「鳳凰伝」は音楽を多用し、これまで以上に娘役に比重がおかれているのも話題だ。「歌える子には歌を、踊れる子には踊りをと考えます。次の宝塚を考えた野心作であることを宙組の生徒も理解してくれている。それがものすごいパワーになっている」と胸を張る。