●カラフの父、そして父に付き添っていたタマルはとらえられ、嫉妬と憎悪にかられるアデルマに「王子の名前を白状しろ」としつように責め立てられる。タマルは名前を知っているのは自分ひとりだとうそをついて、カラフの父を守る。憎悪のもとがカラフへの恋慕であるとアデルマが口走ったとき、タマルは兵士から剣を奪って自分の体に突き立てる。「これで王子の名前を知る者はいない」。
カラフへの想いを抱いたアデルマとタマル。憎悪と無償。対照的だが、どちらも愛の形なのだ。人間の悲しさやおろかしさが象徴的に描かれる場面だ。タマルの自害のこの場面は、とても強烈だ。宝塚には往々にしてこうした場面が出てくるが、きわめて印象的だ。ふづきアデルマと彩乃タマルとが際だって対照的に演じられたからこその際だちかたなのだと考えるが、ともかくもっとも涙誘われる場面だ。 |