淀川長治の銀幕旅行
「ライオン・キング」
この記事は産経新聞94年06月28日の夕刊に掲載されました。
1994年作、1時間27分。アニメはこの長さがいい。子供が見つめて楽しみいっぱいの時間。

こんどは有名童話でなくオリジナル。兄の王座を狙う邪悪の弟。まさしくシュエイクスピアふうのクラシック。これをライオンでやるところにアニメの魅力があろう。

今回の最高最大の拍手は“表情”“演技”。これが今は亡きウォルトの精神を継いで完ぺきの出来。

人間の演技ではすべてがオーバー。アクトもこれがライオンとなると“かわいくて、かわいくて”どうしようもない。これに悪(わる)が、またアニメ得意の悪の名演。動物総動員のこのアニメ。イボイノシシやヒヒザル、それに山猫やアタマのいい鳥などが活躍の、このそれぞれの演技が実にうまい。さらにライオンの大きな足、その歩く重量感。当然ながらこの“重さ”を画家が手を抜くとアニメは三流となる。

アフリカ原野の一大騒動は待ってましたのお楽しみだが、今回は妙なものが染められた。陽は沈み夜となり月が出たが、やがてこれ沈み再び朝来る。王のかわいい息子シンバ(声・マシュー・ブロデリック)がこれを教えられる、その教えがサークル・ライフ(輪廻転生)。アメリカ映画にホトケの教え。これが今やモダンなる流行か。

王(声・ジェームズ・アール・ジョーンズ)、弟の野心家(声・ジェレミー・アイアンズ)、それにいやらしい悪人の弟子ハイエナの一匹(声・ウーピー・ゴールドバーグ)とぜいたく。この表情、この演技。王のかわいい息子シンバ、この主役がかわいくてかわいくて。

ただし、である…。シナリオがぐるぐる回転して広がらない。野獣の暴走などスリルの用意はあるも、後半にいたりこの脚本、疲れを見せたぞ。

それにしてもウォルト・ディズニー、65歳で死して早28年。しかしこのアニメ美術の灯を今になお輝かすこの一座の努力に拍手をいたそう!  (映画評論家)



淀川長治

ライオン・キング

監督
ロジャー・アレーズ
ロブ・ミンコフ

脚本
ジョナサン・ロバーツ
アイリーン・メッチ

音楽
エルトン・ジョン
ティム・ライス

声の出演
マシュー・ブロデリック
ジェームズ・アール・ジョーンズ
ジェレミー・アイアンズ
ウーピー・ゴールドバーグ
ジョナサン・テーラー・トーマス
ネイサン・レイン

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