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淀川長治の銀幕旅行
「ウォレスとグルミット、危機一髪!」とびきりけったいなイギリスのアニメ
この記事は産経新聞97年7月15日の夕刊に掲載されました。
イギリスのクレイ・アニメ。粘土(ねんど)人形のアニメ。1995年作。すでに去年2本日本で封切り。「ペンギンに気をつけろ!」(1993)、「チーズ・ホリデー」(1989)。これ、今年39歳のニック・パーク作品。すでにアメリカのオスカー・アニメ賞をとっている。

 ところでこのアニメ、ひとくせまさしくひとくせあってイギリスくさく、そのタッチそのストーリー、まさにイギリス・ムード。ここに発明狂ウォレス、この友人、実はワンちゃんのグルミット。この仲間ふたりをイギリス・コメディーでスピーディーに動かしていくのだが、やはりイギリスだ。

探偵趣味と三角関係スリル、それによく見ているとウォレスはいい親父、グルミットもオス犬だがこれが芸が細かく、オスのくせに毛糸を編んだり、どっか女くさい。ここらあたりがディズニーと違って、ビール一杯ひっかけてからの見物というお楽しみを見せる。

さて、ウォレスが毛糸屋の女主人ウェンドレンに恋をする。毛糸の編み物を楽しむグルミットすこしヤキモチ。グルミットが愛読中の本はドッグトエフスキーの「罪と罰」というぐあいで、ことごとく洒落のめし、ゴルフ好きの親父も手を止めてこのアニメにゆすり笑い…というイギリスのクレイ・アニメ。

作家のニック・パークはイギリスの写真家の息子。13歳のとき母親の糸まきの毛糸で「ねずみのワルター」という物語を作り、「ウォレスとグルミット」にも羊やペンギンなどおなじみの共演者が活躍する。いまや世界各国がアニメ映画を作るのだが、イギリスのこのねんど人形のアニメはくせが強い。

つまりおこのみが仕込まれすぎて子供より大人向き。動きと表情もグロテスク、しかもイギリス・モダンがしみこんでウォレスとグルミット、このふたりまさしくホモダチみたい。いかにもここに登場のどれもがかわいくないのに嬉しくなる。ウォレスがほれる毛糸屋の女主人、このいやらしい顔。それがまた面白い。  (映画評論家)



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故淀川長治さん

平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。

ウォレスとグルミット、危機一髪!

監督
ニック・パーク

脚本
ボブ・ベイカー
ニック・パーク

製作
デイビッド・スプロクストン
ピーター・ロード

撮影
デイブ・アレックス・リデッド

編集
ヘレン・ガラード

音楽
ジュリアン・ノット

美術
フィル・ルイス

声の出演

ピーター・サリス

アン・レイド