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淀川長治の銀幕旅行
「クラッシュ」えびでたいを釣るごとき映画
この記事は産経新聞97年1月28日の夕刊に掲載されました。
 たいとはばかな子供たち。えびとは車とセックス。いま最も若者がほしがっている“車”、いま若者が最もやりたがっている“セックス”。これをえさに若い客を呼ぶ映画。

 監督がデビッド・クローネンバーグ。これもえさのひとつ。クローネンバーグといえば「裸のランチ」「スキャナーズ」「デッドゾーン」などですでに若者観客をつかんでいるのだが、何のことはない、「ザ・フライ」(ハエ)、この一九八六年作でアメリカでは一躍人気者となった。人間がハエになる映画というよりも男が裸身でしゃがんだままのポーズでハエになる科学実験スリル。実はその人気、男が裸でしゃがんでいる両足のまたの付け根の辺りがちらとのぞく、男のあそこ見せかけギリギリ映画。

 というわけでこの「クラッシュ」(一九九六年作。カナダ映画。カラー。一時間四十一分)もこの題名どおり車の“衝突”、この瞬間にセックス・ムードが沸き起こるというばかな映画。それでいろんなストーリーをでっちあげながら、実は車内セックスのありとあらゆるポーズの運動シーン次々の登場。

 中には男と男のセックスまでも現れて、特にジェームズ・ディーンの車がぶつかったときはなどとばからしい若い観客へのサービスぶりも加える。結果は狭い車の中でのセックスが何といやらしいかを見せるだけでなく、車の中のセックスということでこれがかんつうとも見ることができ、さらに男と男のセックスがこのように遠慮がちに車の中でも燃えるなんぞと思わせて、若い観客は車とセックスとセックス・スタイルとまだまだ趣向を凝らしたセックス・ムードにたんまりと浸りたまえ、てなばか映画。

 ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター(「ピアノ・レッスン」)、このほかデボラ・アンガーなども出てはいるものの、主役は“車内セックス”と車の“クラッシュ”。このクラッシュはあれのクライマックスにも通じるというセックス運動映画。見たければお勝手に。

 (映画評論家)



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故淀川長治さん

平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。

クラッシュ

監督・製作・脚本:
デビッド・クローネンバーグ

製作総指揮:
ロバート・ラントス
ジェレミー・トーマス

原作:
ジェームズ・グレアム・バラード

撮影:
ピーター・サスチスキー

編集:
ロン・サンダース

衣装:
デニス・クローネンバーグ

音楽:
ハワード・ショア


出演:

ジェームズ・スペイダー

ホリー・ハンター

デボラ・アンガー

エリアス・コーティアス

ロザンナ・アークエット

ピーター・マックニール

ヨランデ・ジュリアン

シェリル・スウォーツ


※デニス・クローネンバーグはクローネンバーグ監督の妹