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淀川長治の銀幕旅行
「ファースト・ワイフ・クラブ」今や離婚は朝のトーストのごとく…
この記事は産経新聞97年4月22日の夕刊に掲載されました。
パラマウント1996年作、1時間43分。もちろんカラー。女3人、この細君が夫の浮気にカチンとなって、夫いじめの“男、見るべからず、女の戦い”みたいな映画。

ゴールディ・ホーン(すこしシワが目立ってきた映画女優)、ベット・ミドラー(夫を立派に電気屋に育て上げた妻)、ダイアン・キートン(結婚して25年目に夫がセックス・ストップ)。ところで映画女優のゴールディ、実は自分のおかかえ運転手をつまんで今日までかかって映画プロデューサーにまで叩き上げたのに…、この3人、夫に女ができたとひそかにさぐっての離婚さわぎ。

その昔トーキー初期の同じくパラマウント映画「恋愛運動場」(マリッジ・プレイグラウンド)1929年作はイディス・ウォートンのベストセラーの映画化。離婚がふえて子供たちが学校で“あんたのパパは何人目なの”という会話。ケイ・フランシス、リリアン・タッシュマン、メアリー・ブライアンという美女3人競演。

監督が、しかしぼんくらのロタール・メンディスだったので女がうまく描けなかったが、今度は「ポリスアカデミー」の女に関してはもっとぼんくらのヒュー・ウィルソン監督。女のくささゼロ。3人の亭主役がこれもすべてダメ。

しかしゴールディの目ダマ。ダイアンのめがね。ベットのあだっぽさ。この3人が“あたしよ”と画面から呼びかけているみたいな熱演でたっぷり楽しませたが、亭主のほうの男優すべてバカぞろいで、誰がうまいかなんてモンじゃない凡技。それで、ゴールディの目ダマ。ダイアンのめがね。ベットのあだっぽさ。これこそがお楽しみのコメディー。さて誰がお気に召すことやら。

私はゴールディの大ファンでありましたが、今回はベット・ミドラーのあだっぽさに拍手。日本題名、アメリカの原題どおり。さすれば今やセカンド・ワイフ、サード・ワイフと続きファーストは珍しいなんぞという時代に相成りしか、アナオソロシや。

 (映画評論家)



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故淀川長治さん

平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。

ファースト・ワイフ・クラブ

監督
ヒュー・ウィルソン

原作
オリビア・ゴールドスミス

脚本
ロバート・ハーリング

製作
スコット・ルーディン

撮影
ドナルド・ソーリン

編集
ジョン・ブルーム

美術
ピーター・ラーキン

衣装
セオニ・V・アルドリッジ

音楽
マーク・シャイマン

出演

ダイアン・キートン

ゴールディ・ホーン

ベット・ミドラー

マギー・スミス

ダン・ヘダヤ

ストッカード・チャニング

ビクター・バーガー

スティーブン・コリンズ