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淀川長治の銀幕旅行
「ジャック」"怖い"コッポラ製作・監督の 久しぶりの注目作
この記事は産経新聞97年3月4日の夕刊に掲載されました。
ジャックは母が妊娠して2カ月で生まれた男の子。医者の説明によるとこの子、1年で4歳に、つまり人の4倍の速さで成長。この映画、久しぶりコッポラ製作と監督の1時間53分。1996年度作品。

軽いコメディーと見せて怖い映画。コッポラとは日本とアメリカで私は都合三度会ったが、その三度とも甘ったれた若い息子を抱き締めていた。私はその息子の顔を見た。この息子が海でおぼれて死んだのだ。どんなに悲しかったことか。この映画、ラストにその子にささげると記された

ロビン・ウィリアムズの手足、体、毛だらけの大人が実は十歳で、学校に行く。だからはじめは爆笑。この子供にふんしたロビンがおもしろい。笑っているうちにこの子供、大人になって、やがて白髪が頭に見えて死が迫る。

笑いのうちに神の約束を示すその死が迫る。コッポラはただのコメディーを作ってはいなかった。わが子の死から生命を涙で見つめてのこのコッポラ作品。怖い。

ところで10歳が40歳になってゆくそのさま、ロビンが大人のからだで小学生を演じるのは、おもしろさよりも何とも巧み。これを見ていると、西田敏行がこんなのやるといい。そうも思った。

共演者すべてを忘れてロビンを見つめる。そのロビン、子供から青春、恋、それをサッと通って17歳の卒業時では68歳。頭髪が白くなった。怖い。やっぱりコッポラだ。

脚本はジェームス・デ・モナコとギャリー・ナドー。コッポラが息子の22歳の死を自分で慰めているかのごとき悲しい映画。

 (映画評論家)



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故淀川長治さん

平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。

ジャック

フランシス・フォード・コッポラ

脚本
ジェームス・デ・モナコ
ギャリー・ナドー

製作総指揮
ダグ・クレイボーン

製作
リカード・メストレス
フレッド・フーカス
フランシス・フォード・コッポラ

撮影
ジョン・トール

編集
バリー・マルキン

衣装
アギー・ジェラード・ロジャーズ

音楽
マイケル・ケイメン


出演

ロビン・ウィリアムズ

ダイアン・レイン

ブライアン・カーウィン

ジェニファー・ロペス

ビル・コスビー

フラン・ドレッシャー

トッド・ボスレー

セス・スミス

マリオ・イェディディア