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お盆だしカントリーロード
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私は旅行好きでして、亡き柳家小さん師匠に教えてもらった旅噺「二人旅」をよくやります。マクラには、「雷の旅」という江戸小噺。雷様がお天道様とお月様を誘って旅に出る。雷様が宿で朝目を覚ますとふたりはもういない。「一緒にきたお天道様とお月様がいないが、どうした?」と宿の人に聞くと「はい、今朝早くにおたちにりました」。「たった? へえ、月日のたつのは早いもんだなあ」。「君、旅行することある?」「うん。たびたび」と、即席でつくったひと口噺は、あんまり受けませんでしたが…。
さて、「二人旅」。気の合った、のんきな江戸っ子同士の二人連れが、わらじ履きでのんびりと田舎道をいく。田んぼで人に道を尋ねたつもりが、相手はかかしだった。「なんだ、かかしか。よくできてんな。でも一日中立っているとくたぶれんだろうな。だって足が棒になっているもの」。
こんな噺が以前より受けなくなってきたのは、そもそもかかしを知る人が少なくなったからかも。
二人は道中、都々逸やなぞがけをやり合う。「お前が着ている着物とかけて、正宗の刀ととく。その心は…さわっただけで切れそうだ」。
こんなのんびり旅噺のBGMにはオリビア・ニュートンジョンの「カントリー・ロード(故郷へ帰りたい)」を聞かせたくなってしまうのが、私の悪いくせ。この曲、テレビの旅番組によく使われているし、これを聴くと旅行に行きたくなってしまう。
一昨年、オリビアの来日コンサートのとき、ファンを代表してアルバム「オリビア~ベスト・オブ・オリビア・ニュートン・ジョン」をご本人からいただいたのは、うれしい思い出。「フィジカル」「ジョリーン」「愛の告白」などのヒット曲が“全員集合”しているお得な1枚。
振り返ればオリビアに夢中になっていた若かりしころ。わが師、林家正蔵からいわれたものだ。「お前はオリビアとかよくいうらしいが、なんだいそりゃあ? どこのビアホールだい?」
★★★
落語を題材にしたテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」の影響で寄席に若い人たちが行くようになったり、あるいは子供たちの間で「寿限無」をそらんじることが人気になったりと、落語が静かなブームになっているとか。そんな中、ENAKでは春風亭栄枝師匠の音楽コラムを始めます。栄枝師匠はとなにしろ三度の飯より四度の落語より洋楽が好きといういささか困った真打ちなのではありますが、さすがの軽妙な筆で、落語と洋楽について書いていきます。毎月半ばごろ掲載予定です。
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information |
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(1)「牡丹灯籠」とKiss
(2)「寿限無」とC.C.R
(3)お盆だしカントリーロード
◆profile
しゅんぷうてい・えいし
落語家
東京都豊島区出身。
昭和32年3月 京華高等学校卒業
昭和32年10月 8代目春風亭柳枝に入門
昭和34年12月 同師匠没後8代目林家正蔵に移門「林家枝二」
昭和35年8月 二つ目昇進
昭和48年3月 真打ち昇進
昭和57年1月 師匠彦六(正蔵改め)死去
昭和58年7月 7代目春風亭栄枝を襲名
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