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恋愛路線で活性化
今年の秋も「渋い文芸」より「甘い恋」?
8月22日(火) 東京朝刊 by 松本明子
秋になると、邦画といえば従来なら文芸大作や時代劇がラインアップに並ぶところだが、ここ数年は恋愛映画が主流となっている。物語の王道とはいえ、なぜこうもジャンルが集中するのか。安直な企画を指摘する声もあるが、邦画は恋愛路線で活性化されている現状も背景にある。

韓国の同名映画をリメークした米国版「イルマーレ」

セカチュー余波
2年前、2本の純愛映画が大ヒットした。興行収入85億円を記録した「世界の中心で、愛をさけぶ」、興収48億円の「いま、会いにゆきます」。映画ジャーナリストの中山治美さんは「“セカチュー”の余波が続いている」と指摘する。

昨秋こそ、三島由紀夫原作の「春の雪」、藤沢周平原作の「蝉しぐれ」など重厚な文芸作品が見られたが、今年は山田洋次監督、木村拓哉主演で話題の時代劇「武士の一分」(12月公開)が目立つくらい。恋愛、純愛ものが続く。

海外も恋愛モノ
「ラフ」(26日)は長澤まさみ速水もこみち主演のプールサイド・ラブストーリー。「シュガー&スパイス 風味絶佳」(9月16日)は山田詠美原作のベストセラー恋愛小説の映画化。「虹の女神 Rainbow Song」(10月28日)は岩井俊二が自身の監督作品以外で初めてプロデュースを手がける。

長澤まさみと速水みこみちの共演が話題の映画「ラフ」

そのほか、純愛小説のバイブルと呼ばれる村山由佳のベストセラーを映画化した「天使の卵」(10月21日)。“いま会い”と同じ市川拓司原作で、いちずな思いを描く「ただ、君を愛してる」(10月28日)。大人のラブストーリー「アジアンタムブルー」(11月予定)などが待たれる。

一方、邦画以外も、“セカチュー”の韓国版リメーク「僕の、世界の中心は、君だ。」(26日)をはじめ、韓国の同名映画をリメークした米国版「イルマーレ」(9月予定)、「ウィンター・ソング」(11月予定)など。

2次利用も視野
中山さんは「最近の映画は、ファンが定着して収益が見込めるコミック原作ものが中心。そこに映画会社、出版社、テレビ局などが加わった製作委員会方式で製作され、写真集やドラマ化、DVD発売など“2次産業”まで目論んでいるからおのずと文芸作品より、ドラマの視聴者層と同じF1(20〜34歳の女性)層や若者受けの映画となってしまう」と分析する。

そのうえで、恋愛路線で実益を上げている邦画界への注文として、「余裕のあるいま、若手育成に力を注いでもらいたい」と付け加えた。

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