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守屋純子「プレイグラウンド」
日本ジャズの真摯な発展を聴け!
Spice Of Life/SOL JP-0004 2,520円(税込)
守屋純子は、オーケストラによる表現を追究するジャズピアニスト。

最近の日本人によるジャズ状況は独自の発展を遂げて、僕は勝手にJジャズと呼んでいるが、それなりの活況を呈している。上原ひろみのようにビートの種類をあまり意識せずに、ある意味柔軟な発想の音楽を作り出すピアニストもいれば、菊地成孔のように表現分野そのものの境界線を楽々とまたいで活動するサックス奏者もいる。

そうした身のこなしの軽いJジャズの演奏家たちに比べると学生時代から一貫してオーケストラ表現を追究する守屋は、ある意味より真摯(しんし)に見え、逆にいえば守旧的な印象を与えるのか前述の上原や菊地ほど話題にのぼる機会も少ないようだ。

とはいえ、その作編曲能力への評価が高いことは、昨年のアジアからは初の米セロニアス・モンク・コンペティション作曲賞受賞が証明する。

本当はそういう権威を持ち出すまでもなく、CDを聴けばオーケストラという言葉が与える印象とは異なる、彼女の音楽が有する軽やかでさわやかな魅力はすぐにも分かるのだけれど。意欲的な試みを盛り込みながら仕上がりが軽やかでさわやかであるからこそ、米国の賞を獲得したのだともいえる。

オーケストラという形態にこれまで腰が引けていた人がいるなら、賞を受けた後のこの最新作は、6人という編成なので、よりとっつきやすいかもしれず、時機を得た発表だ。

三拍子の表題曲には、守屋らしさが詰まっている。軽快な速度感。透明な飛翔感。それはたとえば快適なドライブで窓の外に流れる景色が与えてくれる心地よさで、守屋作品の魅力の基本はここにある。

続く「Through Times Square」も同様。重厚な導入部に続き、守屋のピアノに導かれてラテン風味の旋律が始まる。各楽器の即興部分はビートが軽快な4ビートに変わり、ライアン・カイザーのトランペットが心地よく鳴る。

ピアニストとしての力量を楽しみたければ独奏によるミシェル・ルグランの「アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー(シェルブールの雨傘)」を聴くといい。独奏時にはクラシック的表現とジャズの融合を試みるという守屋らしく、非常に端正な表現を味わうことができる。

この作品で、そのビートの心地よさを感じられたら、オーケストラ作品も聴いてほしい。編成が変わっても、与えてくれるものは同じはずだ。

また、守屋は31日午後7時から東京・赤坂の草月ホールで「セロニアス・モンク・コンペティション作曲賞受賞記念コンサート」を開く。こちらは16人のオーケストラ編成での演奏。ジャズオーケストラのダイナミクスや繊細さを体感できる。当日券6000円。問い合わせはサンライズプロモーション東京、電話0570・00・3337。(ENAK編集長)



これまでに聴いたCD
守屋純子「プレイグラウンド」


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