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主婦の覚醒、鮮やかに
「魂萌え!」風吹ジュンに聞く 
1月26日(金) 東京朝刊 by 岡田敏一
定年退職した夫の急死で平凡な主婦が第2の人生に目覚める姿を淡々と描く「魂萌え!」(阪本順治監督、27日公開)。主人公の専業主婦、関口敏子を演じるのは、テレビや映画で活動の幅を広げている風吹ジュンで、「団塊の世代の主人公らしいビジュアル作りに加え、あえて風吹ジュンらしさを消して普通の人を演じるよう努めました」と苦労話を披露した。

主人公の専業主婦、関口敏子を演じる風吹ジュン(撮影・岡田敏一)

舞台は東京近郊の住宅街。サラリーマンだった夫、隆之(寺尾聰)が定年退職からわずか3年後に心臓発作で急死、戸惑う敏子。葬儀の後、渡米して妻子をもうけていた長男、彰之(田中哲司)もこれを機に同居したいと言い出し、長女の美保(常盤貴子)は兄の身勝手さに憤慨する。

そんなとき突然、夫の携帯電話が鳴る。彼の死を知らなかった女性、伊藤昭子(三田佳子)からだった。敏子より年上の昭子は、隆之の会社の同期で、彼と10年間も不倫関係にあったのだ。衝撃を受ける敏子。彼女の中で何かが弾けた…。

桐野夏生の人気同名小説が原作。風吹は「原作と違って、敏子さんが亡くなった夫の留守電に気持ちを吐露したり、映画技師になったりと、世の中をより意識した敏子さんが出ています」。

そして脚本では、魂が「萌える」という原作のタイトルを、「覚醒(かくせい)する」と解釈している。「実際『萌え』を英語に訳すと、『Awake』(覚醒する、再び活気づくの意味)なんですってよ」。

目の前の彼女はどう考えても54歳には見えないキュートぶりだが、撮影では「監督の意見でワザと老けました。団塊世代の主人公であることを疑われないようなビジュアル作りに徹しました。わざと顔に照明を当てなかったりして(笑い)」。

徹底したのは、ビジュアルだけではない。「監督はすべてが緻密(ちみつ)。『敏子さん年表』というものを作ってくださって、何歳のときに世の中はどうだったのかが分かるよう、当時の主要なニュースやヒット映画が羅列してあった」と打ち明ける。

敏子になり切るため、ゴミの分別やフライパンの使い方など基本的な主婦業を地道にこなした。徹底的なリアリティーの追求が作品の質を高めたのは間違いない。

「『KT』や『王手』といった阪本監督の過去の作品の出演者のみなさんが、それまでの出演作と違ってみえたし、監督にも男気を感じます」。そう思い、阪本監督の作品に出演しようと思ったとか。そういう意味では、彼女もこの作品で新たな一面をさらけ出すことに成功している。

「三田さんの素晴らしい演技も見ものだし、(カプセルホテルの風呂で偶然一緒になった老女役の)加藤治子さんの怪演も弾けてて素晴らしいですよ」と共演者の演技もたたえた。

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