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「組織で戦う姿日本的」 「生」の選挙運動、綿密に描写
映画「選挙」 想田和弘監督、山内和彦さんに聞く 
    大阪夕刊 
小泉純一郎前首相がつくりだした「小泉劇場」のまっただ中で、地縁も地盤もないまま川崎市議会の補欠選挙に挑んだ山内和彦さんに密着、ナレーションなどを入れずに“生”の姿を描き出した映画「選挙」。想田和弘監督の「観察映画」第1弾でもある同作品は、今年2月のベルリン国際映画祭に正式出品され、大きな反響を呼んだ。「自分自身も持っていた選挙の概念が崩れ、面白かった」という想田監督と山内さんに話を聞いた。

「見る人それそれが価値判断をして、考えてほしい」と話す相田和弘監督(右)と山内和彦さん
「見る人それそれが価値判断をして、考えてほしい」と話す相田和弘監督(右)と山内和彦さん

2005年秋、政治経験の全くない山内さんはひょんなことから自民党の落下傘候補として川崎市議会議員の補欠選挙(宮前区)に出馬。1議席を争う選挙に、もともと地盤を持つ市議とその後援会の全面支援を受けて戦うが、「とにかく名前を連呼しろ」、「電柱にもおじぎを」と怒られながら、いかに短期間で名前を覚えてもらうかという“どぶ板”選挙を徹頭徹尾貫いていく。

「(撮影している)自分が、水か空気のようになることが理想」と話す想田は、小さなカメラ一つで友人の山内さんや選挙陣営に密着し、例えば後援会の関係者が山内さんに声を荒らげる場面や、他の市議の支援者が、ビラの折り込みや電話作戦に汗を流しながら「(山内さんを応援するのは)今回だけ」と本音を話す部分など、内幕を浮かび上がらせる。

「選挙の候補者は、チームを率いる強力なリーダーだっていう、ぼくの持っていたイメージも崩された。個人じゃなくてチームで動く。すごく日本的」と想田。「プロの組織に新参者が入った場合、会社でも、野球チームでも、同じことが起こるのでは。つまり選挙が題材なんだけど、ある種日本人論になるんじゃないか」とも語る。

一方、ベルリンでもたすき姿でキャンペーンし、大いに話題を呼んだ山内さんは「応援体制に水を差すことだけは避けようと何の疑問もなくやっていた。でも映画になってみると、選挙制度や選挙運動そのものがちょっとおかしい。それを気づかせてくれた」という。

淡々と、しかし綿密に描かれていくが、2人とも「政治的メッセージは込められていない」と口をそろえる。だからこそ「いろんな主義主張の人に見てほしい」(想田)と力を込める。

23日から第七藝術劇場で公開。

>>■映画「選挙」現実の選挙戦を撮影 観客に“疑似体験”



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